5−1怪人の猛攻(上)

アクセレカンパニーのイクアージョン達はこれから3つの問題を加抱えることになる。二つはまだ朧げではっきりとはしていなかったのだが、一つは怪人イラガの事だ。愁達はファミレスで昼食をとりながら怪人の事で話し合っていた。


「ほんっとヤバイんだって!アリアの事知っていたのよあいつ!今度は絶対一人の時を狙って来ると思う、だから皆んな、今は離れ離れで行動するんじゃなくて一緒にいようよ!それだったら安心じゃない?」


パスタランチを口にしながらも喋りまくるサリィに愁は同調しながら答えた。


「そうだね、アリアもサリィも気をつけないと。何かあったら大変だよ」


「別に、サリィはいいけど私は大丈夫よ」


そう言って笑顔を見せるアリアを見て、三条が声を潜めて愁に言った。


アリアあのこの性格上、全て自分一人であの怪人を片付けようとするだろうな」


そう言われ苦い顔をする愁に三条は悪戯坊やのように笑った。


「そこで密かに、ちょっと細工を施した」


ランチを食べ終わったサリィは食後の葡萄のモンブランを口にしながらも、突然感嘆符を上げた。


「あーあぁ、愁さんがいて三条さんとみずっちがいて、更に斗川さんもいたら私は安心なのになぁー」


「私がどうかしたのか」


突然彼らのいる店に現れた斗川にサリィはきゃっ、と歓喜の声を上げた。


「と、斗川さん!もしかして私に会いに来たんですか?」


「そうだな。ところで三条」


浮ついたサリィにも適当に返し斗川は三条に顔を向けると、三条は面倒臭い顔で言った。


「どうしてここが解ったんだ」


「事務所に聞けばすぐ解る。とは逐一連絡を取っているんだろ」


嫌味ったらしく答えた斗川の言葉で、皆は一斉に三条に顔を向けた。


「それはともかく今度あいつらに会わせてやろうと思ってな」


「何だと?」


「社長と息子の事は知るまい。紹介してやろう」


斗川は照屋カンパニーにイクアージョンを売買をしているのを思い出したが、三条はそもそも斗川お前が撒いた種だろうが、という言葉を押し殺して言った。


「解った。ところでお前はもう昼は済ませたのか」


「お前は俺に奢らせようとしている魂胆が見え見えだ」



皆が食事を済ませた後も話し合っている中、一人席を立って店の中の化粧室に向かうアリア。


鏡を見ながら口紅を手にしたその時、鏡に見知らぬ男が自分の背後に立っているのが映った。


「アリア、仕返しに来たよ」


その言葉にアリアに戦慄が走った。すると、通りかかった愁がこっちに気づくと男は黙って立ち去っていく。


やって来た愁にアリアは表情を見せずに言った。


「愁くん、私先に出るわね」


「えっ、どうしたの?」


「サリィに言っといて。ゆっくりしてって」


そう言ってアリアは店から出ると、人混みの中に男を見つけて追いかける。

人気が無くなった街道へくると、男は歩きながら怪人の姿へと変わっていった。


「本当に一人の時に来たわね」


怪人イラガが振り返ったと同時にアリアは立ち止まりイクアージョンをかざすと、変華しながらアリアの全身からピンク色の光が放出し、花弁が派手に舞い散った!


『いつの間にこんな細工を!三条さんしかいないわ!』


恥ずかしいのを必死で堪えてメンタルを正常に保とうとするラナンキュラスにイラガは言った。


「わざわざ追いかけてくれるなんてバカな奴。今日こそ倒してやるよ」


「私も今度こそは逃さないわよ!」


ラナンキュラスは銃で一閃を引いて作り出したリボンを左手にし、マガジンを変えた銃を右手にイラガと向きあった。

向かって来たイラガはラナンキュラスに接近し連続攻撃して来た!

間合いを詰めて蹴りやパンチを打って襲ってくるイラガにラナンキュラスのリボンで弾き返し、イラガに打ち付けた!


「甘いんだよ!」


イラガは両腕を振りながらリボンを払うと両腕の毛針でリボンはボロボロに切り刻まれていく。ラナンキュラスは追い詰められながらも隙をみて銃を撃つ機会を狙っていた。


がぁうっ!!


イラガの腕の毛針がラナンキュラスに向けて飛んだ!ラナンキュラスはリボンをもう一方の手で縦にピンと張ると、飛んで来た毛針を弾き返し、跳ね返った毛針はイラガに刺さった。


「ぐはぁあ!」


ラナンキュラスは俊敏にイラガに銃を向けた、その時。


「アリア!」


そこへ突如現れたサリィがジニアに変華して叫んだ。


「サリィ、何で来たの!」


「だって斗川さん三条さんと話してるから、私も出たのよ。私、誰か呼んでくるから待ってて!!」


助けを呼ぼうとするジニアにさっきまでラナンキュラスと戦っていたイラガは方向転換すると、大きくジャンプしてジニアの前に立ちはだかった。


「こっちがどうなってもいいのかなー?」


毛ばりのついた腕を向けられたジニアは叫んだ。


「アリア、こんなストーカーのいう事聞いちゃダメよ!」


ムッとしたイラガは秋発的にジニアをはたいた。


「サリィ!」


地に突っ伏したジニアを目にしたラナンキュラスは怒りの感情を抑えながら言った。


「サリィに手を出したら許さないわよ」


「君達が俺を怒らせなければ何もしないんだよ。怒らせなければね」


そう言われたラナンキュラスは手に持っていた武器とリボンを遠くに投げ、手を上げるとイラガは笑いながらラナンキュラスの方に歩きだした。


「ねえ、俺って最強だと思わないー?だって、触っただけでやられるんだよ」


黙ったままのラナンキュラスに毛虫のような体がどんどん近づいてくる。


「これで終わり、最後に君をこの手で抱きしめてあげるよ」


顔を近づけたイラガは一斉に両手を振り上げた。その時、その手に燃え盛る火がついた!


現れたのはイクアージョン鶫(スラッシュ)だった。鶫は間髪入れずに叫んだ!


派手な光を見てやって来た。アリアから離れろ!!」


一瞬の隙をみてラナンキュラスは武器を手に取りジニアの方に走った。


「お前も俺にやられろぉ!!」


イラガは全身から毛針を発しながら口から粘液系のものを鶫に浴びせた。だが鶫は巨大な炎を発して毛針を燃やしていく!


「虫には火だろ!!」


鶫はアリア達を救いたいという一心で気迫を漲らせると、鶫は空中で大きな炎輪から炎のビークを作り出しかまいたちのように切り裂く炎がイラガを襲った!


「うぐぅえぇっ!!」


いつもの炎輪より上の力を発揮するにはそれなりの技量が必要だった。上手くいけば大きなダメージを与えられるがもし失敗すれば自分に負荷がかかり損傷をまねきかねない大技だった。

鶫は空中で回転しながら出来た大きな炎が鋭利な突起物を作り出し、それが一個のビークとなってイラガに向けて走ったのだ!


炎のビークはイラガに命中ヒットし、再び宙へ飛ぶと炎のビークを何個も造り出そうとしている。


「ははっ‥失敗したらどうすんの?自滅するつもり?」


「黙れ!!!」


そう叫んだ鶫から炎の嘴が雨のように降り注いだ!!


しかしイラガはビークが落ちる寸前で後退りし、逃げるように姿を消したのだった。鶫は悔しそうに叫んだ。


「またあいつを取り逃した‥くそっ!!」







一方、エイ市支部にいた咲は一人で机に向かっていると、玄関のドアが開いたのに咲が気づいた。


「社長、お帰りなさい」


帰って来た篁は無表情でただいま、と言いデスクの椅子に腰掛けると、咲は同時に席を立った。


「遅かったですね」


「ああ、奴らの事を調べていたんだ」


急須にポットのお湯を入れながら、咲は篁の顔がいつもとは違うことに気づいた。普段も寡黙ではあるが、今日は更に重苦しい雰囲気を放つ篁に咲はお茶の入った湯飲みを出した。


挿絵(近況ノートより)

https://kakuyomu.jp/users/mira_3300/news/16816700428925141163


「ありがとう」


湯飲みに手をつけながらも無言の篁に咲は声をかけた。


「どうしたのですか?」


篁は思い込むように、ゆっくりと口を開いた。



『まさか、こんな事になってしまうとは』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る