3−1 ディサミナージョンとの戦い

アクセラーカンパニーエイ支部にはディサミナージョンとなって襲撃してきた数人の男達が捕獲された。追求したところ彼らはとある会社に働いていて、そこでディサミナージョンの変身システムを渡されこの場を襲うように命じられたという。


「じゃあ‥そろそろ俺たちを返してくれないかな、もういいでしょ」


そうへらへらと笑っている彼らに水池は奥の方でぼそっと言った。


「優しい会社だねぇ。‥これですぐ戻れるなんて‥」


ある意味嫌味にも聞こえるが、彼らは急に固まり顔を強張こわばらせて言い返した。


「何言ってやがるんだ、脅かしか?いかにもただでは済まないみたいな言い方して」


「裏でやってる事とはいえ君たちもうディサミナージョンにはなれないし、の悪い人だったら、命の保証はないよね」


そう言われ互いに顔を見合わせた社員たちは、突然すがるように叫んだ。


「頼む、助けてくれないか。俺たち白状しただろ!」


「人を襲っておいてずいぶんと調子いいわね」


「俺たちだって家族がいるんだ。命令されてやっただけでもししくじったなんて耳に入ったら、奴らにどんな目に合うかわからない!」


懇願されてアリアは困ったように愁と目を見合わせた。


「先輩、どうするんですか」


「警察に行けば身柄は確保してくれるだろう。後は知らん」


三条は突き放すように言うと彼らは出て行った。


「とりあえずディサミナージョンの転売元は突き止めたんだ。探りに行こう」






後日、愁と三条とアリアは本拠地であるという会社に向かった。


目の前の「テリヤカンパニー」という看板が立った中小企業の会社を見ながら愁が「ここって‥普通の会社ですよね」と呟いた。


「僕たち、こんなおおっぴらに来て大丈夫ですか?」


「とりあえず行ってみよう。反応を見てみるんだ」


そう言って三条が笑うと、デイ支部の佐幸と針原も合流して来た。


「今日はあいつはいないのか」


二人を見ながらそう呟いた三条はその方が良いと思った。裏で斗川が関連している事を、彼らに知られないまま事を終わらせたかったから‥


彼らはその会社に足を踏み入れた。やや広めの敷地内には幾つかの建物がありその一つを覗いて見ると、中は工場となっていて横長の机に何列も並んでパート社員達が仕事をしている。

その中で何人か固まって雑談をしながら作業をしている女子社員達が見慣れぬ訪問者に気付くと、一人がやって来た。


「すみませぇん、ここ関係者以外は入れませんけどぉ」


「申し遅れました。私アクセレカンパニーの者で、ここの社長に話を伺いに来たのですが」


「今いないけど、用件は?」


その女はで二十代の色気を振りまきながら面倒臭そうに喋る。テレビの中のタレントのようにキラキラした見た目は製造業で働いている他の主婦達とは別格とでも言いたいような、この場所では似つかわしくない身なりをしていた。愁達は彼女を取り巻いていた、怪訝な顔をした主婦たちの視線を一気に浴びた。


「実は、我々が使う道具の偽造品が最近街を襲う事件が多々あり、それがここから出回ってると聞きまして」


そう言われて女と聞き耳を立てていた後ろのパート主婦達は驚いた顔をした。


「そんな物あるわけないでしょ」


「アカナちゃん、人を襲うとかこの人らも物騒だから、無視した方がいいよ!」


背後から取り巻きの女子社員達も騒ぎ出すと、それを静止させる怒鳴り声が工場内に響いた。


「おい絹白キヌシラ、現場に戻れ!お前らも口動かさないで手ェ動かせ、さっさと仕事しろぉ!!」


向こうから汚れた作業服を着た髭面の中年男がやって来る。彼は三条たちの前に来ると、とたんに来客相手の対応に変わった。


「どうも初めましてー。私、工場長の逗尾ずおと申します。えーここでは作業に支障が出るので、お話は向こうでお願いします」






「そうですか‥‥この会社にそーんなデマが、出回っているのですか」


「先日うちの会社が襲われまして。しかしこちらは至って普通の会社で、情報が交錯している状態です」


「そうですよー‥至って普通ですよー‥‥」


逗尾に連れられて奥の工場へと進んでいくと、いままで騒がしかった周囲が段々人気が無くなり静かになっていった。離れの工場に着き大きな扉を開くと、逗尾は急に声色を変えて言った。


「こちらもねぇ、そういう噂とかあると支障がね、色々出るんですよぉー」


工場の中に、二人のディサミナージョンに捕らえられた数人の男達がいた。ゴォオン、という大きな音と共に扉が閉まると逗尾は目の前の男達に怒鳴り出した。


「君らねぇ‥君らの失態でこうなったんだよ!」


「工場長、すいませんでした!」


彼らは先日ディサミナージョンになってエイ市支部を襲った社員達だった。あの後警察に助けを求めたが取り合ってはくれず、その後ここに捕らえられたのだった。怯えている彼らに逗尾は口元を歪めて笑いジワを見せると、全身が灰黒いもやが体を覆った。


彼らにも緊張が走り、イクアージョンを胸にかざした。

逗尾はディサミナージョンへと変わり、愁達もイクアージョンへと変華した!


「俺の名はディサミナージョン 溶接ウェールド


「俺たちはレーザーとブレーキだ!」


社員達の所にいたディサミナージョン二人もそう叫ぶと、針原はアンビリーバボーな顔で叫んだ。


「おいおいさっき知らねぇって言ったくせに、嘘つき!」


「そもそも、知っていても教えるわけがないだろうがぁあ!!!」


そう叫んだウェールドに突然、レーザーとブレーキの二人が謎の砲弾を放った!

一瞬の瞬きの後、ウェールドはさらに変化し、通常の姿に加え装甲や装備を充実させたスティール・ウェールドとなった!!


ディサミナージョン スティール・ウェールドは捕らえられた社員達に向けて叫んだ。


「彼らはディサミナージョン 検品、不可だ!即刻廃棄する!」


了解ラジャー!」


そう叫びながらスティール・ウェールド、レーザーとブレーキは社員達に飛びかかると、彼らの前にラナンキュラスが庇うように立ちはだかり、銃を撃った!


「あなたたち、変身してない人に何てことするの!」


銃声が何発も響き渡り、三人のディサミナージョンはその攻撃を避けながら跳び、ラナンキュラスはその隙に社員達を隅の方に避難させた。

ディサミナージョン ブレーキとレーザーは、再び同時に砲弾ををスティール・ウェールドに向けて発した。レーザーとブレーキが発した「鉄変砲」は鉄が変化する砲弾、空中で合わさると曲げブレーキ型抜きレーザーの力でさらにパワーアップし、両手に板状の長い鉄製の武器を装備、キャタピラのような車輪の付いたミサイル砲に乗ると、足元に装備されたミサイルを次々と発射した!


スラッシュはスティール・ウェールドの放つミサイルを炎輪で、ラナンキュラスは銃で破壊していく。


「あいつを倒す前にあの部下の二人を片付けないと!」


キャプチャーはそう言ってブレーキとレーザーの方へと斧を構え走った。迎え撃つブレーキとレーザーの二人は、向かってくるキャプチャーの手前で「鉄変砲」を放った。鉄変砲は空中で合わさると鋭利な鉄の凶器へと変わり、空を切りながらキャプチャーへと飛んだ。

キャプチャーは斧で弾き返すが彼らは次々と鉄の凶器を作り出し狙ってきた。何度も攻撃を返しながらキャプチャーはグリッドに声をかけた。


「針原、今のうちにあいつらを撃て!」


叫ぶキャプチャーにグリットは、まるで人ごとのような声を出した。


「やなこったぁあーーぇい!!」


「何?何でだ!?」


キャプチャーは自分の意に反する態度を取るグリッドに唖然とした。


「お前がやるんだろー?だったらいいじゃん。こいつ等を倒すのは俺とお前じゃ無い。俺か、お前かのどっちかじゃーーん」


「くそ、だったら俺一人でやる!!」


そう言われイエーィ!と声を上げて向こうへ行くグリッドを尻目に、キャプチャーは怒りで肩を震わせた。


『何で、針原あいつに期待したんだ俺は‥‥

ちくしょう、仲間じゃなかったら、とっくにとどめを刺して縁を切ってやる!』


そんな二人を見かねてイクアージョン レイがグリッドに言った。


「君、出来る限り早めに終わらせたい。独断で行動するのは他に支障が出るから、控えてくれ」


「うるせぃ、俺のリーダーは斗川さんだ!それ以外の指示は受けねぃ!」


「そうか。それならこうしよう」


そう言うとレイは、ディサミナージョン ブレーキとレーザーの間へと走った。

ブレーキとレーザーは向かってくるレイを見るや「鉄変砲」を放った。空中で鉄の武器となりレイに目掛けて飛んでくる!

レイは光電力を足に集中させると、跳んできた凶器を足で払い弾き返した鉄の凶器はブレーキに命中した。

レイは更にレーザーに向けて光熱球を投げた。レーザーは波動を放ったがそれを打ち消し、一瞬の速さで体を射抜くとブレーキとレーザーのゲージは無くなり元の姿に戻った。


「これで君は今日は休戦するか一人であっちを倒すかどっちかだ。もしくは仲良くやってくれたまえ」


呆気なく倒されてグリッドは唖然とした。


「解りました‥‥‥‥!」

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