3−2

「おのれ私の忠実な部下を駄目にしやがって!」


ディサミナージョン スティール・ウェールドは憎々しげに車輪を走らせ、ミサイルを撃ちまくる。爆発音が響く中、彼は叫んだ。


「どうですかぁーお客さん、我が社の製品の技術は!うちで造ったんですよ!!」


「あいつ、人の物を勝手に使い回したくせにあんな事を言っている」


レイが愚痴を溢したその時、グリッドの周りを砂塵が舞った。


「お前なんかに負けねぇ!」


広い倉庫は煙のほかに砂が舞い上がり、見えにくくなった視界の中どんどんグリッドの姿は砂の中に隠れていく。

それまで走らせていたスティール・ウェールドの足元の車輪が砂に埋れ、それでも車輪を空回りさせて突き進もうとするとラナンキュラスが下方向に銃を撃つと走行していたタイヤが破裂した。

砂の中からグリッドが待ち構え、触手を向けて方向性を失ったスティール・ウェールドに襲いかかる。


「ウォィエー!!」


グリッドの触手はスティール・ウェールドを刺そうとするが、装甲に憚れなかなか刺せない。両者打ち合いながらも隙を見てグリッドの触手がスティール・ウェールドに狙いを定めようとしたその時、

スティールウェールドは円形のパッドを手にし回転させた!


「くらえ、サンダー!!」


スティール・ウェールドの回転するサンダーでグリッドは弾かれ飛ばされた!そんなグリッド目掛けてスティール・ウェールドがサンダーでとどめを打とうとした!

キャプチャーが向こうの壁に綱銃ネットガンを撃ち、向こう壁へと渡った網で移動しながら横一閃にスティール・ウェールドを打ち叩いた。覆っていた装甲部分とサンダーは音を立てて壊れると、彼は突然壊れた装甲を脱ぎ捨てて跳んだ。

彼はディサミナージョン ウェールドに戻ったが、両腕の鉄の武器は装備していたままだ。


「はっはっはっ、装甲を取り外したら弱くなったと思っているのか!!」


ディサミナージョン ウェールドが声を立てて笑いながら両腕の武器から火花を散らせ攻撃してきた。皆目が眩むような熱光に怯んだが、スラッシュが上空から跳びながら炎輪を何発も繰り出しウェールドへと飛ばした。


「鳥ごときが、くらえぇ!!!」


ウェールドの熱光の凶器とスラッシュの炎の輪は同時に攻撃を繰り出した。スラッシュはウェールドの武器と熱光を避けることができたがウェールドはスラッシュの放った炎が弓のように弧を描くと、ウェールドの両腕の武器は根元近くで斬られた。

更にスラッシュがウェールドの懐に飛び込み拳を撃つと、それを受けたウェールドは敗北し、元の姿に戻った。







「この男なら全部知っている。事情を聞こう」


レイ達がそう言って逗尾に近づいたその時、工場の重い扉を誰かが開いた。



「やっつけてくれてどうもありがとぉーー」


やって来たのは先ほど工場にいた女子社員の絹白 朱奈アカナだった。


「あいつ、いつも怒鳴りつけてきて嫌いだったの。でも、これでようやく昇格できるわ」


そう言いながらアカナは社員達の方を見た。


「‥君ら、私に付く?どうするの?」


「は、はい、お願いします」


逗尾の部下だった社員達はそこに倒れている逗尾を忘れて縋るようにアカナの元へ走ると、逗尾は息も絶え絶えに言った。


「おい‥お前ら‥俺を見捨てるつもりか‥面倒見てやっただろう!」


「私に楯突く者はいらないの。あんたに勝てる方法を考えたら、裏で悪い事をしている社長ねって思いついて、頑張って彼に取り入っちゃった」


「オ、オゥ、ガチの愛人じゃん」


「私ね、欲しいものは何でも手に入れないと気が済まないタチなのよぉ」


そう言って魅惑的な瞳でレイを見つめた。

今まで女社員の輪の中心になっていないと気が済まない女が悪くなったとしても、彼らはこの女を対処する事に困惑した。しかしアカナは笑みを浮かべながら変身システムを手に胸にかざすとディサミナージョン ロベリアへと姿を変えた!


そして彼女は言った。


「おいで、私の可愛い怪人達」


ロベリアは妖しげな声で闇の方へ手招きをすると、イクアージョン達は何人もの怪人達に囲まれた。不気味な怪人達を観ると巨体から華奢な男、小柄な者もいる。


挿絵(近況ノートより)

https://kakuyomu.jp/users/mira_3300/news/16816700428615009210


その中でラナンキュラスは異様な目をした一人が自分を見ているのに気付いて、異様な寒気がした。


「彼らは街で見つけた選りすぐりの者たちよ。そうそう、こいつは居なかった事にするから」


ロベリアが手を挙げて合図をすると怪人達が逗尾に向けて一気に攻撃した。


「あんなに‥会社の為に頑張ったのに!!」


全身に攻撃を浴びた逗尾はそう言い残し跡形も無く消えた。ロベリアは高らかに笑った。


「お前達も、さっさと全滅してちょうだい。あっはっはっは!」


今の状況でまともに戦うのはヤバイと感じた三条は皆に言った。


「いいか、ここから逃げるぞ」


取り囲む怪人達は五人のイクアージョンに一斉に攻撃を放った!



「ハァイ皆んな!」


周囲に響き渡った、アメリカ人女性の吹き替えのようなハイテンションな声はディメンションだった。イクアージョンと怪人達の間に透明な壁が聳え立った。


「ヴォォオッ!!」


という音と共に電子の壁はディサミナージョン達の攻撃を二次元化させた。キャプチャーは保護銃ネットガンを天に撃ち、網を上空に飛ばしてイクアージョン達は次々と飛んでいくと、消えていった彼らをロベリアは己が勝ち誇ったかのように見送った。



その後この会社にディサミナージョンに関するものは見つからず、会社はいつも通り動いていたが、工場長だった逗尾は突然辞職して居なくなったらしい‥







「あの場所から姿は消しても奴らはまた必ず現れる。あの怪人を倒さなければならない」


エイ支部に戻った愁達は、ディサミナージョンの存在を重く受け止め、対決する覚悟でいた。


「奴らを探すんだ。行こう」


「はい!」と愁達は返事をした。次々と事務所から出る中、「祐ちゃん」と三条を追って咲が声をかけた。


「私、昔の事思い出したの」


三条は咲の顔を見ると、名残惜しそうに頭を撫でて笑った。


「兄貴の呪縛は無くなったんだ。幸せになってくれ」


そう言われ咲は静かに首を振った。


「私、今も祐ちゃんが好き。これからもずっと貴方の光を受けて生きていきたい‥ダメ?」


三条は一方的だと思っていた想いに別れを告げようと言ったのに対し、咲の言葉に唖然とした。


「俺のせいで咲さんが危険な目に遭うし俺も戻れないかもしれない」


「大丈夫、いつもどおり此処に居るから」


三条はしばらく黙ると、背を見せながら「待っていてくれ」と言い残し去っていった。

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