8−2
「しかし、こんな事を言っているが本気でやられては始末が悪いという事で、向こうの相手をしつつ他の従業員にこの状況を防いで貰おうと、水池と愁だけじゃ頼りないから君にも頼もうと思ったんだ」
「あ、でもこんな壮大な話聞き流してね。いつも通りやってればいいのだから。それじゃ、お疲れ様ー」
咲と三条が明るく帰って行き、愁とアリアは取り残された後もしばらく無言だったが、ぼそっと言った。
「咲さんって、斗川さんの妹だったんだね」
「そうなんだ‥‥‥‥」
意味もなく何かがはかなく終わったような感じの愁を、気づかずかアリアは彼の目を見ずに口を開いた。
「愁くん、私のこと心配してくれてありがとう。大丈夫?」
「あ、いや僕の方こそ‥やっぱり七星さんは強いんだね。本気でやられそうだったよ」
「いつまで名字と君で呼ぶの‥‥アリアって呼んで」
そう言いながらあくびをすると、横になり愁の隣で眠り出した。
「私もう寝る」
猫のように眠るアリアは、うっすらとまだやり残した事があったと思い出した。
『あの娘、また来るかな‥‥』
数日後、アリアは出勤前のサリィに会った。
「アリア、来たわね。早速次の計画よ」
「サリィ、悪いけど私もういいの。あっちの支部にいるから」
「どう言う意味!?アリア、斗川さんを裏切るの?」
「裏切ったのはサリィじゃない。斗川さんは尊敬してるけど、サリィに利用される筋合いは無いわ」
「その言い方‥‥まさか」
勘ぐってくるサリィに追及されるのを恐れたアリアはじゃ、もう行くね。と行ってしまった。
『信じられない!信じられないわ!!』
何が信じられないのか判らないがサリィは憤りを感じていた。
実は彼女は今崖っぷちに堕ちいっていたのだった。斗川たちとイクアージョンとして戦っても力不足で足を引っ張る事が多々あり、それでサリィはこのままじゃダメだと思い広告ポスターに出たりアリアを使って篁のイクアージョンを盗もうと考えた。
斗川の横に並ぶアリアを見ながらサリィはいつも彼女に勝つことだけを考えていた。それが今度はいなくなって‥‥
ん?何が問題なの?これで良い筈よ。
デイ市支部に入ったサリィは通路で通りかかった男に遮られた。
「針原‥‥くん、何か用なの?」
同期だった針原忠は同期のくせに性格に難があると感じ、サリィはこの男があまり好きじゃなかった。
「柿谷、あんたは今日から案内に戻れ」
「ど‥どういう意味よ!」
「柿谷がイクアージョンで出来る事はYouTubeで音楽に合わせて踊ること位だ。先日のお前の報告で斗川さんは君らの女の派閥を恐れてチームから降ろすことになった」
「それじゃ、あんたが‥」
「そういうことだ」
取り残されたサリィは青ざめた後、心の中で叫んだ。
『こんな事で負けないわ!‥‥私、絶対叶えるのよ』
サリィの望みはアリアに勝つ事。イクアージョンとして勝つ事が出来なかったサリィの脳裏には、斗川との「電撃入籍」の文字が描かれていた。
みんな、そのうちびっくりさせてやるわ!と夢見るような笑みを浮かべ、サリィはつかつかと通路を歩き出したのだった。
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