7−2
愁の声でイクアージョンを奪う事に失敗したアリアはそのまま逃げ出した。
愁は自分の横をすり抜けようとするアリアを留めようと手を伸ばすが、それを振り切りながら部屋を出た。
挿絵(近況ノートより)
https://kakuyomu.jp/users/mira_3300/news/16816700427886896611
階段から屋上に出たアリアは立ち止まると追って来た愁を睨んだ。
「邪魔しないで!!」
二人は意を決したようにイクアージョンシステムを胸にかざし、互いに《イコール》するとイクアージョン スラッシュとイクアージョン ラナンキュラスに変華した。
間合いを開けて見つめ合うと、すぐさま銃声が響いた。
スラッシュは音と同時に壁に撃ち込まれるラナンキュラスの弾丸を横飛びしながら瞬時にかわし、ラナンキュラスに炎を放つ。
屋上の中を飛び回るスラッシュをラナンキュラスは動体視力で追いながら、一歩先を読んで銃で狙いを付けていく。
スラッシュは隙を見つけラナンキュラスの背後に回った。屋上のコンクリートを蹴って何個もの炎輪を放つと、鳥が弧を描くようにラナンキュラス目掛け飛んでいく。
ラナンキュラスは自分を追って地に点火していく炎を後に建物の方へと走ると、建物を盾にして銃を一発撃ち、中に入った。
スラッシュは続けて中に入ると、階段の踊り場から銃を構えながらラナンキュラスは言った。
「君の性能で、こんな狭い場所で動けるの?」
二人は間合いを詰めると互いに拳と蹴りで戦った。本気の攻撃をしてくるラナンキュラスにスラッシュはどんどんゲージが下がっていく。
倒れかけたスラッシュにラナンキュラスは見下ろしながら銃を向けた。
「ごめんね愁君。これは私が向こうに戻る為なの!」
銃声と共にスラッシュは拳を壁に擦り炎を放った。ラナンキュラスの銃が落ち、スラッシュは咄嗟に体制を戻すと立ち上がってラナンキュラスの手首を捕まえて壁に押しつけた。
「どうしてこんな事をするんだ」
「これは斗川さんの為よ。私、尊敬している彼のためなら何だってするわ!」
スラッシュは目の前にいるラナンキュラスの変華した顔の奥にいるアリアの眼を見ながら叫んだ。
「君はあの人の事を考えない方がいい」
「どうして?愁君言ったじゃない。私の気持ちを大事にしろって!」
「言ったけど、それであの人が喜んだとして、その後君はどうするの?僕はいつも通りの君が好きなんだ。‥‥今の君は、そんな人じゃない!」
スラッシュはラナンキュラスのイクアージョン越しのアリアの眼が緩んだのを見てはっとした。
『-僕は何を言ってるんだ?』
という思いにかられたスラッシュは衝動的にラナンキュラスから離れて頭を抱えたその時、三条達とサリィの声が聞こえてきた。
三条は愁とアリアの間に何か問題があったのは解っていた。彼は変身を解除した愁とアリアを事務所のソファに座らせた。
「七星さん。一体何があったんだ?」
三条の問いにアリアは覚悟して答えた。
「私、篁社長のイクアージョンを盗もうとしました。
ごめんなさい。私を解雇して下さい」
白状したアリアに三条は問いただした。
「それは君が欲しかったからなのか?」
「いいえ」
「そうか」
そのアリアの言葉に三条は全てを悟った。すると、サリィは突然信じられないといった顔で泣き出した。
「アリア、どうして?私、アリアに戻ってきて欲しかったけど、こんな事になるなんて‥」
うつむきながらサリィの伸びたつけまつげは三条に向いていた。そんなサリィに三条は言った。
「柿谷さん。君のところは人員が引くても数多だろうが、うちはそうでもない。私が彼女をこっちに連れて来たのは必要な人員であり大事な社員なんだ。そう斗川にも言ってくれ」
「‥‥‥」
「それに、今ここに居ると君があらぬ疑いをかけられてしまう」
「そうですね‥じゃ、そろそろ失礼します‥」
目を拭きながらサリィは帰ると、事務所のソファに座っている愁とアリアは黙ったまま、気まずい時間が流れた。
そんな二人の前に咲がやって来た。
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