7−1 サリィの陰謀

「アリア、久しぶり」


前回から数日後、仕事の為街に出ていたアリアの前にサリィが現れた。


「一人で仕事?その様子じゃ、まだ開き直っていないようね」


そう言いながら悪びれもなく笑うサリィにアリアは感情を出さずに言った。


「一人で居ちゃ駄目なの?納谷さんだってチーム行動が嫌で単独で仕事してるでしょ。

それに、私はもうそっちとは関係無いわ」


「そんなつれなくしないで欲しいなぁ。私たち、友達だよね」


馴れ馴れしく笑う、そんなサリィを見抜くような目でアリアは呟いた。


「サリィの事はよく知ってる。昔から目的の為には何でもするだった」


「それは全部、斗川さんの為。私たちがまだ研修員だった頃、彼はみんなの憧れの存在で私たちは絶対彼と一緒に仕事をするんだって頑張っていた。

でもアリアが先に選ばれちゃって‥‥

そもそも、私があんな事をしたのは、実は計算。あなたにエイ市支部そっちにまだ残って欲しかったからよ」


「どういう意味?」


その言葉にアリアは顔を凝視すると、サリィは話に乗ったと悟り声のトーンを上げた。


「私の話に乗ってくれるなら、斗川さんにこっちに戻してあげるように取り合ってあげる。これは、斗川さんがきっと喜ぶ計画よ」


アリアはしばらく黙って考えると、意を決したように言った。


「私に‥‥もう一度チャンスを下さい」


「そう。決まった!実はね‥‥」






「お疲れ様でーす!外回りしていたら偶然アリアに会っちゃって、ついでにこっちに遊びに来ちゃいまいしたー!」


エイ市支部に帰って来たアリアについて来たサリィは社内に入ると皆んなに明るく挨拶をした。愁は軽く笑いながら彼女の相手をした。


「柿谷さん、最近うちの広告とかに出てるんでしょ。アイドルみたいで凄いね」


「愁さん、ありがとうございます!そんな風に言ってくれて嬉しい!!」


事務所の壁にはサリィとイクアージョンジニアが華々しく映る広告ポスターが貼ってある。これは彼女が斗川に申請して実現した事で実際彼らもこれのお陰で仕事が増えて忙しかった。


「でもまだ私、まだまだなんです。仕事の事もっと勉強したくて。解らない事だらけだから、これからいろいろ教えて下さい。良いですか?」


そう言った愁を上目遣いに見つめるサリィの洋服から覗いている大きな胸の膨らみが目に入った。


「あ、ああ。そうだね‥‥」


愁は見てはいけない、見てはいけないと思いつつ照れながら視線を外すとアリアの方をちらっと目線を向けた。


彼女は興味も無い感じで向こうのデスクで自分の作業をしている。


あれから、アリアは単独で仕事をし、仕事以外の事は話す事は無くなった‥‥。


「私は用があるので出るが、君はせっかく来たんだ。ゆっくりしていきなさい」


社長の篁がそう促すとサリィは今度は篁の方に行き笑顔を振りまいた。


「斗川さんから、篁社長は昔は凄かったって聞きました。もうイクアージョンは使わないんですか?」


「私のは向こうに置いてある。‥‥だが、昔から使っている物でもう古くなってしまったが」


「使わないなんて勿体ないですよ!社長の持っているイクアージョンって、一体どんな性能なんですか?」


「そもそもイクアージョンに強さなんてものは必要ないんだ‥‥

それじゃ私は失礼する」


そう言って篁は席を外した。サリィは周りを見渡すと申し訳なさそうに言った。


「みなさん、忙しかったら気にせず仕事行って下さい。何なら私、アリアと二人でお留守番しますから。ねっ」


「え、ええ‥‥」


アリアは沈むような顔でそう答えた。



事務所の中はそれぞれが動き出し、二人以外いなくなった隙にサリィはアリアに小声で囁いた。


「アリア、篁社長のイクアージョンを盗んで」


「そ、そんな事、駄目よ」


驚きながらさすがにそれは、と言おうとしたアリアの顔を制するようにサリィは言った。


「こっちに戻りたく無いの?これは斗川さんの為。彼が喜ぶ事なんだから‥」


視線を離さないサリィにアリアは意を決したように頷くと、二人は事務所内の奥へと向かった。



「この奥に社長のもう一つの部屋があるらしいわ‥‥私はここで見張ってるから行ってきて」


アリアは中に入って行くと、暫くしてからドアの前で見張っていたサリィの前に愁が現れた。


「あれ?どうしたの?七星さんは?」


「うん。もうそろそろ帰ろうかなぁって‥‥あ、」


愁に見られたサリィは取り繕うに言うと、予定を変更してアリアをここから引き離す作戦を考えた。

サリィは愁に苦し紛れに言った。


「さっき、アリアがこの中へ入って行ったけど、そこって、社長の部屋ですよね」


「えっ?」



中に入ったアリアが社長室からさらに奥のドアを出ると、通路のない踊り場と階段があった。それは上に通じる階段しかなく、アリアはその階段を上がる。

最上階の屋上へと続く階段の向いの前に小さな部屋があった。


『‥‥これだ』


中は書斎で見回して見ると棚の片隅にイクアージョンが置いてあった。

その隣に誰かの写真が飾ってあったが、彼女はそれには目もくれずにイクアージョンに手を伸ばした。


「何をしているんだ!」


サリィに言われやって来た愁はアリアが社長室にあるイクアージョンを持ち去ろうとするのを見てしまった。

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