6−1 女同士の戦い
「七星逢里愛。今日から君はアクセレカンパニーエイ支部で働いてもらう」
アクセレカンパニーエイ支部社内で、社長の篁からそう言い放たれた七星アリア。彼女は冷静な顔で篁を見据えながら「納得いきません」とはっきり答えた。
「私はデイ支部の人間です。三条さんに突然連れて来られていきなり移転しましたなんて、どうしてこんな話になったのですか!?」
「え?君たちはいつも俺たちの物を狙ってるからどっこいどっこいじゃないか」
「それとこれとは違います!私は人ですよ!こんなの、不法です!!」
それまで感情を抑えていたアリアが長い髪を揺らせながら三条に吠えるように叫んで机を叩くと、二人のやりとりを聞いていた水池と咲も口を挟んできた。
「そもそも、事の発端はキャプチャーのミスだと聞きました。僕は佐幸君が悪いと思います」
「そうよね。祐ちゃんはそんなに悪く無いと思うわ」
「さらなる要因はあの時、近くで身動きが取れない君を討とうかと迷ったが愁が君と闘いたく無いって言ってたもんだからな‥助ける訳にもいかず、こっちに来れば良かろうと思ってつい連れて来たんだよ」
「先輩‥‥そんな事言わないで下さい」
今度は赤面しながらキョドっている愁に向けてアリアは憤慨した顔を向ける。
「愁君、君は私のことを誤解していない?私と戦いたく無いって言っているけど、私も君もイクアージョンだから。特訓の時は佐幸君とも闘ってるわ。でもそれは、イクアージョンの為で普段の私は攻撃的じゃないのよ!」
「そ、そうだよね。ごめん‥」
「何がともあれ、私は向こうに戻りますから!いいですね」
叫び終えたアリアに篁は淡々と言った。
「好きにしなさい。だけどここにいる間は業務は果たして欲しい。早速だが仕事だ」
この時アリアはまあ、すぐに戻れるだろうと安易に考えていた。
‥‥隙あらば彼らを裏切る事も可能だと思い、愁達と仕事に向かった。
「
とあるホテルの高級レストランでコース料理を取る芽絵と上司のヤスシ。その近くの席で、愁と水池とアリアが二人のやりとりをこっそり見ていた。
「彼よ。芽絵さんの弟さんからの依頼で探べて欲しいって言ってた相手は」
「ご注文をどうぞ」
店員が注文を聞きに来ると水池はメニューも見ずに「お水下さい」と即答し、愁も「あ、僕も」と続けた。
(アリア)「ちょっと二人とも、なんで水だけなんですか!」
(愁)「水が千円で一番安いから‥」
(水池)「三条さんは店で張り込む時は奢られると思って来ないんだよね。他を調査するとか言って」
(アリア)「せっかく来たんだから何か頼みましょう。ここのランチ美味しいんですよ、ランチは安いから!すいません、ランチ三つ!!」
よくある展開で三人はヤスシと芽絵の優雅なデートの会話を聞き耳しつつランチをがっついていると、芽絵が
「お母様、具合どう?今度お見舞いに行きたいのだけど、病院どこかしら」
ヤスシの顔はワイングラスを手に笑ってはいるが動かない。芽絵はさらに続けた。
「結婚の準備も近づいてるでしょ。貴方もこの前うちに来たから私もそろそろあなたの家に挨拶に伺いたいのよ‥」
「お袋はまだ安静にしなくてはいけないんだ。病気が落ち着いたらでいいよ」
「そう‥‥解った」
芽絵が納得するとヤスシは満面の笑みを芽絵に向ける。
「芽絵、愛してるよ。僕が君と付き合っているのは、君が資産家の娘だからと言う訳じゃ、決して無いんだよ‥本当だよ」
そう言って優しく芽絵の手を握ったヤスシの顔を、アリアはじっと見た‥‥
「ホテルの料理もいいけど、やっぱりこれは美味しいね」
ホテルの外に出た愁達は街道でコンビニで買ったアイスを食べながらそう呟くと、隣にいる愁に打ち明けるように話しかけた。
「私、時々辛い時は外に出て空を見るの。そしたら、偶然愁くんに会ったのよ」
アリアは空を見上げながら言った。
「私のところ、イクアージョンの志願者が何人かいて、他の子に負けないように必死だった。その後斗川さんからイクアージョンになれる事が出来た時、嬉しかった」
そう言ったアリアの脳裏には、微笑む斗川を思い出していた‥‥
「私、尊敬しているの。だから裏切ることは出来ない」
愁はそんな彼女を理解しようと思い、遠くを見ているアリアを見て笑った。
「その気持ち、大事にした方がいいよ」
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