5−2

「起きろ‥‥目を覚ませ!」


捕らえられたマキは見知らぬ男の声でうっすらと目を開いた。そこは薄暗い倉庫のような場所。連れ拐われたマキは両腕を縛られ何人ものイクアージョンと怪人、いずれも不気味な 死狼デスウルフの姿をした物達に囲まれていた。


「ここは『デスウルフ』のアジトだ。お前は人質にする為にここに連れて来た」


「それは、主人の‥‥」


マキの目の前には夫とは程遠い姿の狼のイクアージョンに言った。


「これを知ってるのか。さすがは嫁だ。そう、俺はお前の夫と同じ狼でも死の狼イクアージョンデスウルフだ」


マキはそのデスウルフが納矢から聞いていたリーダーの高釜だと気づいた。彼はさらに聞いて来た。


「お前もこれと同じ物を持っているのか?」


「無いわよ、そんな物」


マキがイクアージョンデスウルフを睨みつけると、マキの両側にいた怪人はへっへっへっと下品に笑いながら言った。


「先日は、旦那様が助けてくれて有難う、命と引き換えてくれたお陰でこれをゲットする事ができました!!」


「あなた達が夫にした事は絶対許さないわ、必ず訴えるから!」


強気な女の言葉に皆閉口するとデスウルフが指示を出した。


「おい、これ以上余計な事を知られたら困る。もう一度静かにさせろ」


怪人はマキに近づき口をハンカチで塞ぐと、麻酔を吸った彼女は次第に意識を失なって目を閉じた。



「この女、本当に持っていないんですかね?」


怪人にそう言われイクアージョンデスウルフは横たわったマキの顔から首、胸元に目をやると、次第に魔が刺した。


「じゃあ確かめてやる」


辺りを見回しながら確認したデスウルフはイクアージョンを解除した。それを床に置き、マキの体に覆いかぶさると、イクアージョンシステムが突然宙を飛んだ。


「高釜さん、あれ!!」


彼らが声を上げてイクアージョンが跳んだ先を目で追うと、倉庫の二階通路にイクアージョン キャプチャーが居た。彼は保護銃ネットガンの網で引き寄せたイクアージョンを捕むと、更に向こうへと飛ばしながら叫んだ。


「納矢さん!!」


イクアージョンが三条に連れられた瀕死の納矢の手に渡ると、彼は高釜と《イコール》するように胸を翳した。


グレーの色をしたイクアージョン ウルフは怪人デスウルフと共に変華した高釜と、その仲間達の前に立ちはだかった。


「ばかめ、こいつがどうなってもいいのか?」


怪人の一人が気を失ったままのマキの腕を掴んで盾にしようとすると、銃声が響いた。


「その人に妙なことをしたら許さないわ!」


キャプチャーとは反対側の二階の通路から銃を構えたイクアージョン ラナンキュラスが叫んだ。撃たれた怪人二人の前にイクアージョン スラッシュとイクアージョン レイが相手し、さらにキャプチャーとラナンキュラスも地上に降りると彼らは怪人達と戦った!


スラッシュは炎の蹴りを討ち、レイは光の拳を放ち、キャプチャーは斧を振りラナンキュラスは銃を撃って次々と怪人達を倒していく。


怪人デスウルフは対峙したイクアージョンウルフに言った。


「死にかけが‥また俺に逢いに来たのか?」


「うるせぇ!お前には怪人がお似合いだ、デス野郎!!」


そう言ってイクアージョン ウルフはデスウルフへと地面に拳を一閃すると、コンクリートがそれに沿って駆け抜けるように裂けた。怪人デスウルフはそれを払い除けながら、イクアージョンウルフの懐に飛びかかりウルフが拳を放とうとした肩を一気に噛み付いた。


「さっさと負けろ‥その後に俺の手で殺ってやる!!」


そう叫んだ怪人デスウルフの体が下から上に裂くように薙いだ。イクアージョンウルフから離れたデスウルフは拳の連打を撃たれ、最後はとどめの一撃で倒れた。


「マキ!!」


イクアージョンウルフは倒れているマキを抱き抱え、救急車の音が聞こえるとイクアージョン を解除して、血を纏うように倒れた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る