3−3

そこには怪人レイブンの他にもう一人、さっきのボランティアの青年がいた。いけないと思ったスラッシュは危ない!と叫ぼうとしたが、彼は一瞬戸惑った。何故なら、さっきまで感じの良かった青年の表情は怪人達と同じくらい悪気に満ちていたから。


そう思った途端ボランティア青年の全身が光に包まれて、スラッシュは目が眩んだ。


「お‥‥お前は!?」


斧を手にカザしたダークグリーンのイクアージョン。スラッシュは自分の職場以外のイクアージョンに会うのはこれが初めてだった。


「俺はイクアージョン 捕撃キャプチャー‥‥宜しくな‥‥ツグミ君」


そう言うとイクアージョン キャプチャーは怪人レイブンの方に向かって両腕を差し伸べると狙いを定め、捕獲銃ネットガンを暴発させた。怪人レイブンは網にかかったように身動きが取れなくなり、そこにキャプチャーは飛びかかった。

自分の攻撃範囲内へと手中に収めたキャプチャーは二人の怪人レイブンを次々と斧で振り叩き、撃ち倒していったのだった。


「もーらい」


イクアージョンキャプチャーは倒れた元怪人からイクアージョン システムを次々と回収していった。スラッシュは戸惑った。見た限り好意的ではなさそうだし、自分の事を知っていた彼は、僕の仕事を狙ってやって来たのか?

すると突然、イクアージョン キャプチャーはスラッシュに向けてネットガンを発動した。


スラッシュはとっさにかわしたが付着してしまった足元が自由を奪われ、キャプチャーはそこを付け込み攻撃してきた!

斧をくらい、ダメージの半分を奪われたスラッシュはキャプチャーに言った。


「イクアージョンは人を守る仕事じゃないのか?何故こんな事をする」


「俺、バージョンアップしたいからさ‥‥イクアージョン システムを集めているんだ‥‥それでさ‥‥君のも欲しいんだ‥‥」


言い終わるやキャプチャーは、振り上げた斧を薪割りをするかのように振り下ろした。その時、


「佐幸君じゃないか」


キャプチャーは突然の声に振り向くと、遠くから三条とイクアージョン ディメンションに変身した水池が歩いてくるのが見えた。


「先輩」


「彼はアクセラーカンパニー、デイ区支部の佐幸君だ」


「えっ」


イクアージョン 捕撃キャプチャー佐幸登は同じ会社の別支部の社員だった。三条は問い詰めるように言った。


「どう言う事か説明してもらいたい」


「いや‥‥あのう‥これも仕事の効率化を図る為で‥‥」


「そうなんだ」


イクアージョン ディメンションは手の十字キーを動かすとピロリン、と音が鳴った。


「裏技で君のゲージを0.1にしたから。あと一回どこかに当たっただけで君は終わるよ」


「ひ、卑怯だ!こんな事していいと思ってるのですか?」


「お互い様だ。こっちもそれ相応の相手をする必要があるからな」


そう言った三条の目はいつもと違っていた。


「君のイクアージョンは貰うからな。その後君は、うちの篁社長に尋問を受けてもらう」


その言葉でキャプチャーの動きが固まると、急に気が変わったように懇願した。


「助けてくれ!俺はこっちに就くよ!色々教えてあげる!あげますから!!」


「あ、大丈夫です」


水池は掌を向けて拒否し戦闘態勢に入ろうとすると、キャプチャーは突然奇声を上げながらネットガンを暴発させて何処かへ消えてしまった。





「それだけじゃないとはこういうことだ。あいつ等は俺達のイクアージョンを狙っている為、阻止しなければならない」


三条の言葉に愁は複雑な表情で言った。


「そんな‥‥同業者どうしで戦うなんて」


愁にとってのもう一つの戦いの幕開けはここから始まったのだった。

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