3−2


七星アリアという女性がいなくなってから愁は町中を歩いていると、暫くしてまた誰かが声をかけてきた。


「あのぅ‥‥すいません。私、この辺を回っているボランティアの者なんですけど、どうかされましたか?」


短髪の頭の若者はそう言って控えめに笑うもそのがっしりした体格でどこか反比例しているように思えた。


「あ、僕はアクセレーカンパニーの花園です。今この周辺を調査していまして」


「あ、そうなんですか‥‥大変ですね‥‥近頃、一人住まいのお年寄りの方とか狙われて、危険ですよね‥‥‥どちらかのお宅に伺われたのですか?」


「ええ、先ほど何軒か回らせて頂きました」


「あの、宜しければ、私もお力になりたいのでご一緒したいのですが、‥‥どうでしょうか」


そう言われても篁社長からは気をつけろと杭を打たれていたので警戒した。彼は見た目は良さげな人に見えても同じ業者を装って個人情報等を聞き出す輩も多いらしいし。余計なことも言えないこんな世の中だから‥


「すみませんが、それは僕にはできないです」


愁が詫びるように言ったその後、向かいの路地を一台の車が通り過ぎるのが目に入った。

愁はハッとした。その車は聞いていたのと同じ、黒いワンボックスに大きなカラスの絵が描いてあったから!


「あの、それじゃ僕は用事があるので失礼します!」


愁はそう言いながらこの場を去ると、車が向かった方へと走り出した。



黒い車はさっき通った町内の路上に泊まるとドアが開き、車内から敵意を剥き出しにした男達がゾロゾロと出てきた。


意を決した愁は彼らの目前に立ちはだかると、《イコール》するようにイクアージョンシステムをかざした。

愁は光り輝く花びらを纏いながらイクアージョンスラッシュに変華し、それに対し彼等は漆黒の怪人 大鴉レイブンへと姿を変えたのだった。


『全部で6人いる!』


怪人レイブンは両腕を広げると羽のように大きな鎌を無数に飛ばしてきた。スラッシュはバク転しながら鎌先をかわし、宙で壁を蹴って上空からレイブンを狙った!

滑り落ちるように滑空する鶫はレイブンの頭に足蹴り《キック》し、そこから次へ飛んでは背中を蹴り、彼らの刃物が使えない場所から攻撃を繰り出した。

スラッシュは考えた。数が多い。一気に済ませて確実に止めないと、下手をすればいずれ逃してしまう。

イクアージョン スラッシュは上空に跳んでビルの壁に足を擦りながら滑空した。一撃で仕留められるように渾身のパワーを込め、摩擦で出来上がった炎輪を怪人レイブン達に投げつけた!!

空を切りヒットすると、レイブンらは次々と倒れていった。


挿絵(近況ノートより)

https://kakuyomu.jp/users/mira_3300/news/16816700426525373829


3人撃った、とスラッシュは身を翻すと、不意に声を上げた。


「あつ!」


怪人レイブンの内の二人が吾郎谷さんの家に向かうのが見えた。彼らは家の居間のガラスを割ってズカズカと中に入って行く。


「爺さん、黙って金の場所を教えろ!!」


二人の怪人レイブンはコタツの吾郎谷さんを見つけるや襲い掛かろうとした!その時、吾郎谷さんの胸から光り輝く花びらが彼の身を覆った!


咲があげた、吾郎谷さんの首につけていたお守りは使い切りイクアージョンシステムで、彼はイクアージョン ゴロウタニ に変身したのだった。コタツと同一化したゴロウタニは座したまま居間の天井へ上昇していき、魔法の絨毯の如くゆっくりと浮遊している。怪人レイブン達はゴロウタニに手を出そうとしたがコタツのコンセントでビシビシと攻撃された!!


追いかけてきたイクアージョン スラッシュは、玄関先の石畳に足をマッチ棒のように擦って二人の怪人レイブンに炎輪を放ち、とどめを刺した。

しかしまだ一人残っている!スラッシュは体のダメージは感じないものの、一人で倒す事で精一杯でメンタルの方がやられそうだった。外に出で辺りを探すと、公道に走る怪人レイブンを見つけた。







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