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ブラウンの髪の青年に連れられた場所はとある雑居ビル。その一角にある事務所に案内されると花園愁は中に入った。


「どうも初めまして。私はアクセレカンパニー社長の篁です。どうぞお座りください」


事務所の奥に居た静かな目つきだが精悍な風貌の男性に勧められてソファに座ると、女性がニコッと笑いながらお茶を出してきた。


「君、業務中に巻き込まれたんだって?大変だったね」


愁は緊張気味に出されたお茶をすすりながら事務所内を見渡した。

中は一見普通のオフィスで、愁の目の前には社長の篁、横にはブラウンの髪の青年が対面して座った。


奥の方に黒髪で猫が目を閉じたような目で体も細い、寡黙そうな男が一人無関心にスマホをいじり、先程お茶を出して来た綺麗なお姉さんは向こうの机に戻って再び事務作業に専念している。


「彼は従業員の三条です。君は、いきなり起きた出来事と彼の姿に驚いた事だろう」


篁は愁に淡々と話し始めた。


「近年、巷の犯罪には手を焼く事が多々あります。そこで色々と考察し研究の結果、我々は相手を無傷で捕獲する業務システムを作り出しました。その名も《イクアージョン》。


イクアージョンシステムを己と相手と《イコール》するように作動させると、発動した保護スーツにより変身する事ができ、お互いダメージを受けません。しかし作動には限界があります。ダメージを受け続け、一定のゲージが0になった方が敗北を意味し相手にを奪われる。それを逃れたければ変身を解除し離脱さえすれば大丈夫。リスクはありますが、我々は犯罪者を仕留める為に身を挺して尽くしています。どうかご安心ください」


愁は解ったような解らないような説明を受け呆気にとられていた。

が、しばらく考え何を思ったのか思い切って口を出した。


「あの‥‥僕、ここで働きたいのですが」


「えっ!?」


事務所にいた者が皆愁に視線を向けた。更に愁はキョドるように話す。


「実は僕、無職なんです‥‥。とかじゃなくて、今まで何をしたらいいのか解らなかったんですが、さっきのを見て思ったんです。世の中、助けたくても手を出せない事が沢山あるのに、ここだったらひょっとして手を出せる人間になれるんじゃないかって」


篁は三条と顔を見合わせたあと、ため息を一つついた。


「解った。やってみなさい。しかし、やるからには本気でないと困る。しばらくは特訓を受けてからだ」


「ありがとうございます!!」


「君の名は?」


「花園愁です!」


「宜しくな、愁ちゃん」


ブラウンの髪の三条 祐卦ゆうかは優しい笑みで微笑んだ。



アクセレカンパニー、エイ市支部の社長の篁弘也


従業員は三条裕卦、切れ長の目の水池みずちはじめ


事務員の天然系の咲さん。


その会社に、花園愁が入社したのだった。



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