第7話 ここはどこ?

おはようさんと[さよなら]のハグをしてから、少し経った。

どうやら一人になったようだ。

体は徐々に回復してきている。

まだ起き上がって歩いたりはできなそうだけど、腕だけなら自由に動かせる。

そういえば病院で寝たきりというと、

腕に点滴の針を刺されたりして動けないイメージだったけど、

私はそうではなかった。

そこまで重症ではなかったのかな?

それにしても、脈を計る機械くらいはついていそうなものだけれど。

何かの理由で最近は使ってなかっただけで、

ベッド周りにそういう設備があるのかもしれない。


せっかく腕も動かせるし、周りの状況を確かめてみよう。

ベッドの外に手を伸ばそうとして、違和感に気づく。

このベッド、病院用のベッドにしては大きくない?

明らかに機能的には余分な広さがある。

病床数をできるだけ多くしたい病院にしては、おかしい。

あと、転落防止用の柵がない。


とりあえずベッドの外に何があるか、手探りで探してみる。

棚だ。

上に心拍数のグラフとかが表示されるモニターが置いてあるかもしれない。

棚の上を手探りしていると、何かを見付けた。

私は指先でそれを調べる。

形としては、スタンドの上に長い棒がついている。

そして棒の先からは糸が飛び出ている。


燭台とろうそく、だろうか?

いや、おかしいけど。

病院でろうそくを使うことってある?

寝ている間に時間が過ぎていて、実はもうすぐ私の誕生日だったとか?

それなら小さなろうそくがたくさんある方が自然だ。

しかし、ここには太く立派なろうそくが一本だけそびえたっている。


こういうものの用途が卑猥なことしか思い浮かばないのは、

私が煩悩にまみれているせい?

でも、他にどんな用途がある?


例えば歴史映画とかでは、夜に明かりとして灯していたりはする。

だけど今時、ろうそくじゃなくてLEDライトでしょ。

明かりとしては3周遅れくらいの骨董品だ。


混乱してきた。

見えない聞こえないだけでも大変なのに、その上訳が分からない状況にいる。

いっそこのろうそくでSMプレイでもされた方がわかりやすい。

いや、それはそれで訳が分からない。

とにかく今はそんなことを考えているより、他の手掛かりを探してみよう。


ベッドを調べていると、角にポールが立っていることに気づく。

それを伝って上の方を調べてみる。

垂れ幕のようなものがかかっているようだ。


つまりこれは、中世ヨーロッパの映画で出て来るような、

いわゆるお姫様ベッドのようだ。

今時こんなものあるだろうか?


いや、これに関してはあるところにはあるのかもしれない。

普通の病院には絶対にないけれど、

裏社会で闇医者に多額の治療費を払えば、こういう扱いを受けるのかもしれない。


つまり、どういうこと?

まず死にかけていた私を、偶然金持ちでSM好きな闇医者が見付けた。

そして闇医者は私をものすごく気に入って、心から大切に看病してくれた。

そうだとすると、これから問題になるのは、体が先払いだったのか、

後払いなのかだ……


いやー、ないない(*´∀`)ノ

じゃあ何があるのか?

整理してみよう。

私は死んだと思ったら、いつの間にか中世ヨーロッパのような環境にいた。

そして妙に親切にしてくれる知らない人たちに囲まれ、

日本語でも英語でもない謎の文字を使ってコミュニケーションを取られている。


つまりこれは、異世界転生だ!

これで全ての説明がつく!


いやー、ないない(*´∀`)ノ

考え過ぎているみたい。

なんか疲れた。

寝よう。

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