エピソード27:Going Down!. Down Down Down......

牛丼屋で、「特盛、生卵、みそ汁とお新香しんこう付き」を窒息死するんじゃないかと思うくらいの勢いでかっ食らう。

「バキュームカーだな」

私の憐れな姿を見て、父親が「ケケケッ」とわらう。

私は現在の窮状きゅうじょうを恥も外聞もなく話した。

餓死寸前である。カッコつけてる場合じゃない。

父親は相変わらず高笑たかわらいを続ける。

ああ、いくらでもわらってくれよ。これが茶飯乞食ちゃめしこじきの成れの果てだよ。

私は牛丼をかき込む。

すると、その目の前にドカリと分厚い封筒が喧嘩腰けんかごしに投げつけられる。

私はハッと、もぐもぐ頬張ほおばりながら父親を見る。

「ここに百万ある」

だから、何だよ?。大人させろって言うのか?。

私は無言でにらむ。

父親はふんぞり返って続ける。

「返さなくていい。テレワークって知ってるか?。今、ウチ、それでボロ儲けしてな。笑いが止まらんよ。はした金だ。取っとけ」

私は、チョコンッと頭を下げ、米を頬張りながら、机の上の札束をサッとカバンに突っ込んだ。

その必死の醜態しゅうたいを見て、また父親がわらう。

畜生、悔しい。しかし、かなわない。

「大変そうだな」

今度はしんみりと真剣に言う。だから、私は正直に答える。

「失業です」

「うむ。どうだ?、俺の愛人にならんか?。そしたらマンションを借りてやって、ついでにデイトナもくれてやるよ」

やっぱりな……。そうくるよな……。「話がしたい」ってラインが来た時点で100%分かってたよ。

やれやれ……。時代劇じゃあるまいし、とうとう年貢の納め時か……。

とりあえず答える。

「そうですね。分かりました」

とりあえず言う。

もちろん偽装である。

しかし、今はこう言うしかない。

この男は、私と社会を結びつける最後の今にも切れそうなたった一本の命綱いのちづなだ。

離すわけにはいかない。

だから、ウソでもOKと言う。

それしか道はない。

この後どうなるかは、また考える。

とりあえず、ここはOKだ。

「ほーう。ずいぶん聞き分けがいいな?。『に』にづいたか?」

「まあ、そんなところです」

「カカカカカカーッ!」

嬉しそうで何よりだよまったく……ッ!。くそったれがッ!。

でも、仕方ない……。

ワクチンと治療薬が開発されるまで言うこと聞くしかあるまいッ……。

はらわた煮えくりかえるが、ここは私の負けだ。

デイトナ手にするまでは死にたくない。

私は最後の米一粒まで丼を天井まで持ち上げてゴックンと飲み干した。

「どうするんですか?。具体的に」

「また、連絡する。細かい決まりはこれからめていこう。とりあえず今日はそういうことだ」

「車代あります?」

「おうおう、忘れてた。大事に使えよ。一般庶民くん」

私はまたまた高笑う父親から2万円受け取って、最低最悪の昼メシを始末して、このきんバカと一旦別れた。とにかく考えなければ。

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