エピソード23:理屈女の大反省会。大人の階段のぼるってか……。

帰宅して、真っ先にシャワーを浴びた。

何もかも洗い流したかった。

私は、唇をゴシゴシ、煙が出るんじゃないかと思うくらいしつこく、何かに取りかれたんじゃないかと思われるくらい狂って洗った。

あの唇は中華料理のクラゲかナマコのような……そんな感触が……。

トラウマだ……。

頭から映像が離れない。

とっさにつま先を伸ばし、顔面にダイブするように唇をぶつけた。

私はなんて愚かなことを……。

そして、なんでこんなことにいつまでもこだわるのか?。

キスなんてヤンキー時代、浴びるようにしていたではないか?。

でも、あのキスとは違う。

魂を売るとはこんな感じを言うんだろうか?。

こんなゴミみたいな茶飯乞食ちゃめしこじきの魂がナンボのモノだと言うのだ。

でも、悔しい。

この気持ちは消えない。

なぜ、私は、キスをしたのか?。

生まれて初めて、この理屈女に明確な答えが出せない。

ただ、落ち込む。

やべえ、鬱になる。

もう、やめた。

気持ちを切り替えなければ……。

戦いは始まったばかりだ。大人しないことは確約できた。あとはデイトナへ進むのみだ。

しかし、今夜の茶飯は疲れた。

早く、そして長く寝なくては。

一秒でも早く身体からだも精神も回復させなくては。

風呂から上がると、息子からラインが来ていた。

「もう今後、一切、会わない。親父から勘当すると言われた」。

フッ、バカが……。

作戦は成功した。やっと「デイトナへの道」のスタートラインに立った。

しかし、もう、ゴールしてしまったのかもしれない。

しつこいようだが、なぜ、私は、キスをしたのか?。

なんてさもしいことを!。

さもしい?。

乞食のくせに?。

でも、美人じゃないか?。

じゃあ、なぜ、身体からだを売った?。キスしなきゃならなかった?。

超美人なのに大人やるかよ!。

そうだ、私は、今日、かすめ取られたのだ。

親父に唇を掠め取られたのだ。プライドをだまし取られた。

悔しい。

あの時の、日本語教師養成学校のNと同じことをやられた。

なんて愚かな!。

同じことを二度も!。

自分で自分が許せない。

やはり、私はあの父親からデイトナを絶対に巻き上げなければならない。

それが、私が私であることの、前も、今も、そしてこれからも変化しない、絶対的な私であることのあかしなのである。

なんてね……。

からまわりの論理……。

堂々巡りのいたちごっこ……。

もう疲れた……。

身体が煮詰まった液体みたいになっている。

寝なければ。

今夜は次の作戦を考えられない。

でも、このままでは終われない。お礼は必ずする。

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