エピソード21:策士、策に溺れない。そう簡単にやらすかよ!。

夜、ホテルのレストランで高級イタリアンを食べた。

さすがクリスマス。

見渡す限りセックス目当ての男と女であふれかえってるな。

メシの味なんてするのかね。

まあ、味なんかどうでもいいんだろう。

そういう私も同じ穴のハイエナだ。

ワインを進めながら私は父親を探る。

この父親のアキレス腱は何なのか?。

仕事や家庭や人間関係について根掘り葉掘り聞いていく。

ここは「聞き役パパ活」の本領発揮。人の悩みを聞き出すのはお手の物。

父親は、待ってましたとばかりに、日ごろのストレスを私にき出す。

冷静に、自慢話を取り除いて聞いていくと、父親の会社は一見、儲かっていて、順風満帆に見える。

デジタル化の波に乗って業績は順調に上がっているらしい。

もはや、この父親から平成不況などという言葉は感じられない。

しかし、よくよく聞いていくと、すべての入り組んだ父親の思考の中心をなすのは、やはり、あのバカ息子だ。

父親が繰り返し発する話題の中には、必ず、遊びほうけて真面目に仕事をしない、後継者としての息子への不満や不安が渦巻うずまいている。

会社のためを思うのなら、息子はこのまま名ばかり役員の状態で、最悪の場合、実質、他者に経営権を譲ってもいいとまで言っている。

もう、息子には何の期待もしていないし、期待しても、30過ぎて遊びすぎた息子に、いまさら会社の経営なんか無理だろう、と諦めている。

なるほどな。これだな!っと私はひらめいた。

ここが攻めどころだなと確信した。

私は話を進める。

「それで、契約のことですけど」

「そうそうッ、どうッ?、私とお付き合いしてくれないか?」

「そう言われても。まだ、息子さんとは正式に契約解除したわけじゃないし、でも、お父さんの気持ちもありがたいんですけど、でも、『親子で』っていうのは……」

「では、息子と別れればいい」

「それはしませんッ」

「なんでッ?」

「まだ契約中です。いきなり、『別の人が出来ました、ハイさようなら』というわけにはいきませんッ」

「へえ、なかなか古風な人だねえ。へえ、ますます気に入ったよ」

「『息子さんもお父さんも』というズルいことは、私はしません」

「男前だな。いい性格だよ。息子もいい人に会った。でも、私は、もうすっかり、君という女性に興味を持ってしまったんだ、そこをまげてお願いできないかい?」

「すごく光栄な話ですけど」

「何が欲しい?。ロレックスか?」

「時計には興味ありません」

「金か?」

「そうハッキリ言われても……」

「契約の交渉だから」

「モラルの問題です」

「難しいこと言うなあ」

「気持ちの問題です」

「じゃあ、どうすればいい?」

「契約は大事です。でも、しょせんはパパ活ですからね。こっちも大そうなことは言えませんけど、でも、『親子』というのは。だから、あくまでもどちらか一人、ということで」

「じゃあ、私だ。息子には別れてもらう」

「いいんですか?」

「何とかする。だから私と契約してくれ」

「手つなぎ以上の身体からだの付き合いはしませんよ?、私の契約は」

「分かってるよ。『大人おとな』という奴だろ?」

「デートのみということです」

「では、私に乗り換えてくれるんだね?」

「乗り換えると言うより、その前に、息子さんにはどう言うんですか?。別れる前にバレたら大変なことになりますよ?」

「ううむ……、そこなんだが……」

「息子さんには『私とは、お父さんとも息子さんとも、親子で縁を切る』と言ってください。絶縁すると」

「なるほど」

「失業することを大変怖がってるようですから、『これ以上遊ぶと、会社をクビにする』と言えば、私と息子さんとは正式に縁が切れると思います。そしたら、私から彼を傷つけることもないですね。私のモヤモヤもスッキリします」

「そりゃいいなッ」

「お父さんからハッキリ言えないんなら、私はお父さんとは付き合いません」

「分かった。息子には厳しく言っておこう」

「後で『私と別れる』とラインさせて下さい」

「分かった。じゃあ、私と付き合ってくれるんだね?」

「言っておきますけど」

「セックスは無しだろ?」

「聞こえますよ?」

「ガハハハハハハーッ」

 お前ら親子、アホだろ……。

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