エピソード20:ぜってぇ大人はさせねえよ。誇りをもって茶飯をする。

それから、私は、いつものように茶飯しながら、父親が動くのをじっと待った。

すると、あの夜から二週間くらいったか、クリスマスの少し前、ラインが来た。

「一度、君と正式にデートしたい。私と契約してほしい」とのこと。

おっぱじまった!。

父親が私を欲しがっている。

いよいよいくさだな。

クリスマスってのが有り有りの見え見えだよな。

向こう側の作戦としては、高級ホテルを予約しておいて、最高のディナーでおもてなしして、そのまま部屋になだれ込む算段なんだろう。

古い。

バブルを過ごしたオッサンらしいよ。

私としてはこれを何とかごまかして逃げ切らなければ。

そのためには短期決戦ではダメだ。

デイトナが手に入っても、それは、私の肉体と引き換えということになるだろう。

身体からだは絶対渡さない。

長い付き合いで勝負する。

セックスは絶対させない。

させてたまるか。

かすめ取らなきゃ意味が無いんだ。

あの、日本語教師養成学校のNを見返してやるんだ。

世間を嘲笑あざわらってやるんだ。

ここは長期決戦に持っていきたい。

そして、デイトナを狙えるチャンスをうかがいたい。

そして落とし入れたい。

でも、どうやって?。

その具体策はまだ浮かばない。

分かるのは「ガッチリとした最後まで計算し尽くされた計画」を立てないこと。

それでは融通がかない。

相手は生きた人間。

野球やゴルフみたいに、状況に応じて臨機応変に作戦を練っていく形の戦いが、この場合ふさわしいだろう。

とにかく、今回は絶対セックスを拒否すること。

はっきり、

「私のパパ活は、大人はしない」

と公言すること。

そこからだ。

クリスマスイヴの夜、私は、とっておきの化粧と衣装を装着して六本木のホテルへ向かった。

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