エピソード17:シナリオライター。つくづく考える商売だよ。

自宅に戻ってデイトナをつくづく眺めた。

帰宅途中、ドンキで宝石商が使う白い薄手の手袋を買っておいた。

私はそっと箱からデイトナ本体を取り出した。

確かに本物だ。

キョロキョロ、ウネウネ、どっからどう見ても間違いなく本物だ。

クソうんこアパートの茶飯乞食ちゃめしこじきに370万のロレックス・デイトナ。

最高の組み合わせだ。

私は、初めてビールを2本自腹で開けた。

グビグビと喉に炭酸がみる。

いい女に最高の時計。

今まで生きてきた中で一番美味うまい酒だ。

しかし、美しい。

デイトナ!。

ただの美しさじゃないんだ。

形としてはオメガのスピードマスターやタグホイヤーのカレラに似ている。

しかし、権力なんだよ、これは。

これは勝者の証なんだ。

今までのチンピラ人生がすべて肯定されたようで胸がスッキリして泣きそうになった。

私は承認された。

やっぱりデイトナで間違いなかったんだ。

私はしつこく眺めた。

そして、眺めれば眺めるほどさっきまであったオフィスでの躊躇ちゅうちょは消えた。

欲しいッ!。

やっぱり誰にも渡したくない。

私のものにしたい。

絶対このデイトナを手に入れたい。

そして何としてでもだまし取りたい。

私はキノコのえた腐れアパートで誓った。

しかし、どうやって落とし入れる?。

ややこしい話だぞ。

「結婚と引き換え」などと30過ぎて幼稚なことを言うボンボンだぞ。

単なるアホか本当の金持ちか分からん。

とにかく、今、とりあえず、こちらが現物を所有している。これは強い。

攻撃権はこちらにある。

おそらく何もしなくても向こうから何か言ってくるだろう。

相手の出方を待つしかあるまい。攻撃はそれからだ。

とにかく今日は疲れた。

ドンキで買ったジャンクフードをパクついて風呂も入らずさっさと寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る