エピソード7:茶飯③ 夕食 ついに本日の本命。狙いはメシじゃねえ、ロレックス。

夜、お次が今日の本命。

40代の広告代理店の管理職。

金のにおいがプンプンする。

駅前で待ち合わせて、少しお茶してから、高級フレンチに行った。

ね?、ファストファッションでそと出ちゃダメでしょ?。

ドレスコードのあるクソ生意気な店だよ。東京ってヤツは呆れる。

でも食ったよ。美味いッ。腹立つッ。

出迎えのシャンパン、

続いてサブレ、

ムース、

カルパッチョ、

スープ、

山菜料理、

魚料理一品目、

魚料理二品目、

メインの肉、

デザート一品目、

デザート二品目、

そしてラストのコーヒーであがり。

フレンチって2時間のドラマだよなあ……。

「たらふく食った」と言いたいところだが、「たらふく愚痴聞いた」と言った方がいい。

サラリーマン相手の場合、ほぼ100%職場の愚痴。

これを2時間ひたすら聞き続けると、ほとほと会社組織になんて入るものかと強く決意してしまう。

精神分析医でもこんな長時間、人ひとりの悩みを聞き続けること無いだろう。

こっちの精神が病みそうだ。

聞き上手というのはつくづく損な役回りだ。

こっちも酒を飲めればね、気も晴れるが。

しかし、酒はやらない。

酔いつぶされると大人やるわなにかかる。用心用心。それに腹持ちも悪いしね。

茶飯乞食はメシ食って空腹満たしてナンボ。

酒は利益にならない。

デミタスコーヒーで仕上げて、とっとと店を出る。

ビルとビルの間に入って3万もらった。おまけにタクシー代1万ゲット。

男が国道に出てタクシーを拾う。手を上げると……。

おッ、パネライじゃん。

車中でデイトナについて聞いてみた。

「ムリムリ!。欲しいけど、正規店でも置いてないよ。中古品でも300万超える。特殊なルートがなければ無理だ」

と吠えた。

チェッ、クソがッ。自慢げに騒ぐなバカ。

更に

「ホテル行くんなら、知り合いに当たってみてもいいよ」

のたまう。

誰がそんな見え見えの手に乗るかよ。

宇宙規模のドアホでも分かる。

「じゃあ、もう3万やるからホテル行こうよ」。

しつこいなあッ!。パパ活女子に嫌われる男ベスト3。

第3位、やたら触る男。

第2位、クレーマー。

そして堂々たる第1位、しつこい男。

誰がやらすかよ!、アメーバ男!。

この天下の美貌を何だと思っていやがる。

「ごめんなさい、プロフィールにあったと思うけど……」

やんわり断ると、次はバーに行くと甘えだす。

ホントしつけえなあ……。

げんなりする……。

A子はこれに太刀打たちうちできなくて大人してるのかなあ……。

断るの面倒くせえからもうヤケクソでセックスして10万ぐらいぼったくってやろうかなとマインドが折れそうになる。

でも、ロレックス・デイトナじゃなきゃイヤだ。

絶対イヤだ。

A子が「大人やる」と言ったとき、私は「絶対にやめろ」と叫んだ。

「社会からかすめ取れ」と怒った。

するとA子は悲しげに言う。

「私もそこそこ美人の方に入るとは思うけど、そっちほど超絶美人じゃないもん……。大人やらなきゃ食えないよ……」。

これ、聞いたとき、私も何だか悲しくなった。

負けるなA子。

会社入ったら負けだよ。

絶対に世の中をだまし切ってやるんだ。

かすめ取ってやるんだ。

私は気分が悪いと言って駅前で降りた。

これ以上しつこく引っ張ると警察沙汰になると思った男も降参して私を始末した。

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