エピソード2:プロフェッショナル:パパ活の流儀

朝食の予約が入ったので朝10時に起きる。

私の食生活は約6時間ズレている。

朝食が昼の12時前後、ランチが夕方あたり、そして夕食が夜の9時以降から朝方まで。

今日も、カビ臭い黄土色おうどいろに干からびた動けば壁や天井からちりが落ちてくる6畳一間のクソボロアパートの万年どこを抜け出す。

まずはシャワー。

世の女性は圧倒的に洗顔のみだろうが、私は絶対シャワーを浴びる。

寝ている間に身体からだあぶらまみれになっているので実は体臭は相当キツい。

身体中の毛穴にまった老廃物をすべてこそぎ落す。

こんな戦場あとのようなけがれクソひび割れ風呂場でも身体は綺麗になる。

風呂から上がったら、いよいよ本命の顔面スキンケア。

オイル・化粧水・UV対策などのメンテをこれでもかとしつこくほどこす。

この顔面じゃなかったら、私、今、生きてないからね。

煙が出るくらいしつこくしつこく施す。

顔が終わると、お次が口腔こうくうケア。

歯・歯茎はぐき・口腔へき・舌を入念に洗浄する。中学・高校時代、ヘビースモーカーだった私の歯はヤニで少し黄ばんでいる。これが、今、一番の後悔。

まだ歯医者で白く修復できる段階なのだそうだが、金が無い。

タバコは今の生活をするようになって即刻やめた。

金銭的に何の得にもならないことも理由の一つだが、何よりも肌荒れすることに、死に至るほどの恐怖を感じたので何の躊躇ちゅうちょもなくやめた。この業界、身体からだが商売道具だ。

口が終わると次は髪。ヘアケア。

ハンドブロー、ツヤ出し、トリートメントなどで髪をツヤツヤのピカピカのサラサラに仕上げる。

ここまで、朝起きて何も食わずに風呂はいって、そしてあらゆる身支度をすると、たちまちクラクラ空腹のめまいに襲われる。

でも、絶対、メシは食わない。

メシは絶対タダでしか食わない。絶対自腹は切らない。

だって美人なんだから。

次は服。

衣装はそこそこ。だって金が無いから。

でも、ファストファッションは着ない。もっぱらアウトレットのメーカー品でそろえている。

ブランドだから型落ち品でもなかなかのコーデができる。

この商売、衣装には気をつかう。

赤貧せきひんクソ無一文のくせに絶対他人には貧乏と思われてはならない。

貧弱だとカモが引っ掛からないし、引っ掛かったとしても、貧しい恰好かっこうというのは相手にも恥をかかせることになるので、そうなると、小遣いがもらえなくなり、そく、失業になるので、服装は武器として割り切ってケチらないことにしている。

しかし、化粧品は思いっきりケチる。

なんと高校生でもないのに百均の化粧品を使っている。

この美貌で。

初めはデパートのメーカー品をかなり真面目に使いこなしていたのだが、それだとあまりにも非現実的な美人になりすぎて、街で人目をいてまともに歩けなくなってしまったので、わざと肌ノリの悪い安物の化粧品で済ませている。

しかし、逆に、その方が、私の超美貌の素材そのものが引き立つのが分かった。

だから化粧はあえて薄くまとめている。

イイ女すぎると相手も引くみたいだ。バランスというわけ。

それが茶飯乞食ちゃめしこじきの流儀。

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