第26話 ものとんvsチンまん 最終ラウンド

 チンまん(棺のアリス)からの要求はエスカレートした。

『お前の裸の写真も同封してよこせ。俺のことを散々コケにしてくれた慰謝料いしゃりょうだ』

『……裸は無理です』

『ニックネームが、もの〝とん〟なだけに、ぶたみたいな体で恥ずかしいってか?』

『太ってない!』

『そんなことは出品してるズボンのサイズ見てるからわかってるよ』

 だったら訊いてくんなボケ。

『あたしから再発送する荷物は中学時代に買ったブラとショーツを送ります。顔を映さなくていいなら、証拠の写真も同封します。送るのと同じやつを着て撮影するので、下着姿までで許してください……』

『まあ顔は勘弁かんべんしてやってもいい。デブじゃないにしろブスだったらえる。前のはそんな奴だったからな。けどよォ、マスク付けた顔の下半分くらいは写り込ませろよ。あとさァ、ものとんちゃん、さらっと今ミスリード使っただろう? やめてくれよォ~』

『ミスリード?』

『〝送るのと同じやつを着て〟ってところだよ。この文は、〝同じデザインの下着をつける〟って意味で使ったな? 予備かなんかで同じ下着のセットがあるんだろう? 実際に身に着けたやつは送らず、着けなかった予備のほうを送る腹積はらづもりだったんだろう? そうはいかないからな。ちゃんと着用する下着には上にも下にも、しるしつけてもらうぞ』

『印?』

『ブラには、そうだなァ、カップの右と左にさっき言ってた、チンまん様へ、棺のアリス様へ、ってのを書いてもらおうか。ショーツには、シミをつくれ』

『……シミって?』

『とぼけんな。白いシミになるくらいオナれってことだよ。濡れたところを履いたままで撮れ。お前の〝とん汁〟をめいっぱいシミ込ませろ。本物のとん汁垂らしたり、別なもの垂らしてシミにしようと思うなよ? 童貞童貞ののしってくれてたけど、俺は違うからな? ごまかしたらわかるぞ』

『…………わかった』

『やっと従順になってくれたね、ものとんちゃん。最初から素直すなおあやまっていたら、オナらずに済んでたのによォ。ぜんぶお前が悪いんだからな? 自分でこういうふうにしちゃったんだぞ? 使用済みの下着を送るのも、下着姿でオナんのも、ひじきの群生地ぐんせいち丸出しの、くぱぁヌード写真を送るのも』

『ちょっと待って! 裸は無しでしょ!? 裸にならないかわりに、他の要求をのんであげるんだから!』

『無しだなんて、誰が言ったよ? コメント見直して見ろよ、無しにするなんてことは一言も書いてないだろう』

卑怯者ひきょうもの、変態、害虫』

『なんかメス豚がブーブー言ってるな。「ブヒィー」って書いたら、考えてやってもいいぞ』

『ブヒィー』

『あ、そうだ、全裸写真は、ブラにサインするペンを突っ込んでるとこアップで撮れ。そんでそのペンも送ってよこせ』

『ちょっと……考え直してくれるんじゃないの!?』

『考えるとは書いたけど、結果変わらなかったってだけだよバーカ。裸写真はもう決定事項な。譲歩はしない。金を稼げなくなるのが嫌だったら、言われたとおりにしろよ、もの豚ちゃ~ん』

『……入れるのは無理』

『なんだってェ?』

『ペンとか、そういうの入れるのは無理って言ってんの』

『あれれ~? もしかして、ひとのことを童貞童貞いっといて、その実、自分が処女だったりするのかなァ?』

『だったら?』

『証拠をきっちり写せよ。それで許してやる』

 5分くらい待ち、あたしは返答す。


『わかった』

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