第24話 ものとんvsチンまん ラウンド2

 チンまんの正体は、あたしのむべき初ブロックの相手、ひつぎのアリスだった。

『ものとんちゃん、初取引のとき、梱包サイズ間違ってただろ。届いた紙袋のサイズはかってみたらA4サイズえてたぞ。あれ、売上金マイナスになったんじゃないのか? 700円で売って、送料が700円取られたんだろ? 運営に手数料分を抜かれて、-35円の赤字。そうだろ?』

 間違いなく、棺のアリスだった……。

『別アカで、また買ってたとか、キモいんだけど』

『なんでブロックしたんだよ。二回目は秒で買ってやってたのになァ』

『そのときにあんたの購入履歴見て、ヤバそうなものばっかり買ってたから。女の子向けのTシャツからスカート、あげくにはレオタードとかユニフォームとかが、ズラッとなんでるんだからブロックされて当然とは思わないの? 頭がどうかしちゃってるのは、あたしじゃなくて、あんた』

『買ってくださいって出品されてるものを買って何が悪いんだ? それに、どうかしちゃってんのは、売ってるほうと違くないか? 女児向けの服なんてのは、ご丁寧に親が出品してくれてるんだぜ? 俺らみたいなピチピチの女子好きのために』

『……誰もあんたみたいな変態が買うとは思ってない』

『嘘つけよ。少なくともお前の場合は違うよなァ?』

 画面の向こう側で、キモデブ男がニヤッと笑っている気がする。

 あたしの場合はたしかにノーとは言えない。

 嫌々ながらも、お金のために、変態をターゲットにして売りさばいていたのだから。


 返答にまって指が止まっていると、チンまん(棺のアリス)が文字数でたたけてくる。

『なにだまってんだよ。お前が変態狙いで出品してんの、露骨ろこつだろ? プロフィールに、女子高生です、とかわざわざ書いちゃってよォ。出品物は、法外じゃないにしろ、やけに高い値つけやがってさァ。それで〝訳あり品〟って思わせて、興味をひくんだよな? そんで商品説明を読ませる。文章はバカなりに考えてると思うぜ。表向きには、ガイドで書くように推奨されてる状態の詳細を書いてるだけだもんなァ。むねがキツくなった、とか、わき部分にシミがある、だけじゃはじけないだろうし。海に着ていったものなのでしおかおりが残っているかもしれません、なんていうのはトンチか? つーか、あの真っ黒いホットパンツ買ってやったけど、安っぽい洗剤の匂いしかしてこないんだけど。お金返してくんない?』

『死ねよゴミムシ』

『ウソウソ、そう怒んなよ。返したらクンカクンカできなくなるもんな。出品物を見る限り、実際に着てたもんだってことはちゃ~んとわかる。今着たら胸がキツいってのはあながち嘘じゃないだろ? 服の製造年月日が新しそうなやつほど、サイズが上がってるからな。ちゃんと調べてんだぞ。今のカップ数教えろよ』

『教えるわけねーだろ、キモデブ童貞』

『そういうものとんちゃんは、ヤリマンか? だろう? ゴスロリなんてメンヘラくらいしか着ないもんな。メンヘラってことはつまりヤリマンだろ? ネットでは服や小物売って、リアルではカラダ売ってる。そうだろ? リアルでも買ってやるから、住所と名前さっさと教えて成長したおっぱいもませろよ。いいだろ?』

 頭が爆発しそうになっていたけれど、住所と名前という言葉で、あたしはすこし冷静になった。

『なに言われたって、匿名解除だけはしないから』

『だったら、使用済みの下着をよこせよ、って話なんだよ』

 と、話が振り出しに戻る……。

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