承.
第6話 エバリュエーション
販売の実績がひとつでもついたおかげか、初取り引き終了後から、出品している黒歴史たちが、ぽつぽつと売れはじめた。
棺のアリスちゃんが、出品者に対する評価で、『はやい発送対応と、ていねいな梱包でした♈ (♡ᴗ͈ˬᴗ͈)ぺこり』と残してくれたことも後押しになっていたのだろう。
どうもありがとう。リピート購入のときには、すこし値引きしてあげよう。-35円の損失は無駄にならなかったし、すぐに
「ふっふっふっ。メイくんも、評価が大事だと、身にしみてわかったようだね」
タマコが、あたしの部屋の学習机の
高校が臨時休校になり、『
「……注文入ってるからさ、ぜひ帰ってくんない?」
「うわっ、それ
床で梱包作業中をしていると、タマコが跳び寄ってきたので、あたしは
「そんなに
「……知らない」ほんとうは知っているけれど、教えてやらない。忘れかけていた記憶をよくもほじくり出しやがって。「もうそこに居ていいから、口閉じてて」
と、言ったところで、閉じてくれないのがタマコという人間。
「評価の話に返るけどさ、」
「いいからあんたが家に帰れ」
「ウチの取引評価に、『悪い』が一つ付いてるの見てた?」
「ん? そうだったっけ?」
「付いちゃってるんだよ……。一度ウチのプロフィール画面開いて、そこからコメントに飛んでみなって。ひっどいこと書かれてあるから」
めずらしくタマコの表情が曇っている。いつも
あたしは梱包の手を休めてスマホを取り出した。
タマコのことは一応アプリ上でフォローだけはしてあるので、そのフォロー
プロフィールを確認すると、たしかに『悪い』評価がひとつだけあった。
コメントページに飛び、あたしは小首をかしげる。
「……『
「わけわかんないっしょ!? たぶんビニールで包み忘れちゃってたんだと思うけどさ。水濡れしてないのに、対策が不十分だったからって、『悪い』を付けやがったんだよ、そいつ!」
この一文だけで他に何も書いてないところを見ると、商品は無事に届いていたのだろう。
「まあ『悪い』っていうのは、ひどいかも」
「でしょーう!? たち悪いから速攻でブロックしてやったもんね! コメントも注文も完全シャットアウト!」
タマコが怒りをあらわにするのは、『悪い』評価を付けられた時期も関係していたようだ。〝ギルマ〟で出品を開始してから間もないときだったため、
「そのあと注文がピタッと止まっちゃったんだよ!」
売りに出していた商品の価格を大幅に下げることで、遠ざかっていた注文者を徐々に呼び戻していき、『良い』の数字を増加させたことで、なんとか信頼を回復させたという話だった。
「以来、他人の評価をのぞいたときなんかに、神経質なコメントを付けてるやつとかは、片っ端からブロックしてるから。メイもやばそうなやつを見つけたら、問答無用でブロックしといたほうがいいって!」
手始めに、タマコからブロックしておくべきか。
それは冗談として、評価に手厳しそうな人をあらかじめ排除しておくことには賛同した。
あたしは、買い手としても、ちょこちょこ〝ギルマ〟を利用しはじめている。注文をおこなうときには自然と、評価を必ず見るようになっていた。『悪い』が多くあったために購入をやめたことも、すでに何度かある。ふんぞり返って、評価が大事だと言われなくても、重要性は心得ている。
というわけで、やはりこいつはブロックしておこう、と、タマコをブロックリストに加えてあげたのだった。
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