#003 秘宝と英雄

第3話です。いよいよ物語が進むという感じです(多分そうなります)。



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『ようこそ、秘宝の間へ』


そう声が響いたとき、洞窟の中央の剣から一際まばゆい閃光が解き放たれた!


(なんだこれは!?魔力が膨大すぎる!!)

全身に異常な力を感じる。マリンの顕現時とは比べ物にならないほどの精霊光と魔力の影響で、なかなか視界が晴れない。


目を腕で覆いながらユウに問いかける。

「ユウ!無事か?」


「ええ!大丈夫よ!リュウも大丈夫なのよね?」

「ああ!大丈夫だ!何が起きてる?」


一体何が起こったというのか。おそらくは秘宝がこれを引き起こしているのだろう。それにしてもこの精霊光は尋常ではない。マリンを軽く凌駕するのではないかと思えるほどだ。


すると、突如光が和らぎ、さっき聞こえた声がまた響いた。


『少年よ。貴様に話がある。私の話を聞く気はあるか?』


脳裏に低く重い声が響き渡る。ユウにも聞こえてるのだろうか。

その俺の思考を読み取ったかのように、


『案ずるな。我の声はそなたにしか聞こえておらぬ。』


…本当に脳に語りかけているようだ。きっと思考も把握されているだろう。


「話は聞く!だがその前にお前は誰なんだ?」


そう口に出して問いかける。すると今度は脳ではなく、洞窟全体に声が響き渡った。


「我の名はセレン。セルペ洞窟に封印されし伝説の秘剣である。」



その瞬間、中央に刺さっていた剣がゆらりと浮かび上がり、抵抗する間もなく俺の胸に吸い込まれた。



「目が覚めた?」


ユウの声が聞こえてくる。目を開けると眼前にユウの顔があった。すごく既視感を覚える光景だ。


「ちょっと、起きたなら早く降りてよね。」


「ああ、ありがとな。」


降りると巨大化したマリン―はいなかった。そこには膝を折って座っているユウが佇んでいる。


「なっ…!」

瞬時に俺の顔が真っ赤に染まった気がした。


それにつられたのか、ユウの顔も赤らんでいる。しかしその恥じらいを表に出すことはなくリュウに尋ねる。


「リュウ、何が起こったか覚えてる?」


何が起こったのか。洞窟で落ちてマリンが待っていて、剣が光ってそのあと―


「ああ、思い出した。もしかして剣が暴走してふたりとも死んじまったのか?」


剣が突然飛んできたのだ。避けれたはずもないし死んだとしか―


「違うわ。死んでなんかいない。むしろその逆よ。」

怒ったような興奮したような不思議な声色でユウが話す。


「死んでないのか?というか逆ってどういうことだ?」


どんどん頭が混乱してくる。死なないに越したことはないが、どうやって死を回避したのかも何もかもが不思議だ。

その疑問にユウが答えてくれた。


「あの剣はもう見えないでしょう?それは、リュウと契約したからよ。剣は文字通りリュウの中に吸い込まれたの。」


剣を吸収して?俺が契約?余計に分からない。


「ここの秘宝はあの剣だったの。そして、あの剣は精霊で、リュウはあの剣と契約したのよ。」


なるほど、宝を奪われるような形になって少し怒っているのか。


「契約って言うけど一方的に契約させられた気がするんだが…そんなのあり得るのか?」


俺は契約する気もなかったし、まして精霊で使い魔になるなど想像もしていなかったことなのだ。


「そうね、契約するには普通相互の了承とか儀式とか何かしらの形があるのだけど…不思議ね。」


「ユウがマリンと契約したときはどんな感じだったんだ?」



「私は、9歳のときに国の儀式で契約したわよ。王家に連なるものは代々それぞれの精霊と9歳の誕生日に契約するの。儀式が契約そのものだからそれ以外になにかしたわけではないわ。」


やはり王女というのは特別なようだ。しかし俺が儀式をしていないのは明らかだし謎は深まるばかり。ほんとうに契約をしたのだろうか?


と、その時。俺の胸元が突然輝き、気がつくと目の前には―少女がいた。


「え…だれだ?」


当然戸惑う。ユウも驚いて目を丸くしている。

少しの硬直のあと、先に落ち着きを取り戻したユウが核心をついた発言をした。


「もしかして…この子リュウと契約したあの剣じゃない?」


その発言をきっかけとしたように、ついに目の前の少女が口を割った。


「そうだよ。私がリュウとの契約者―使い魔と言った方が伝わりやすいだろうか。 私はセレン・セルペ。セレンと呼んでほしい。」


「セレン、でいいのか?その…いつ俺と契約したことになったんだ?正直身に覚えがないんだが…」


「何を言っているの?私の話を聞くと言ったじゃない。それが契約の合図だったのよ。」


唖然とした。あの発言が契約そのものに直結してこんな状況になるなど誰が予想しただろう。それにあの剣が少女の姿をとっていることも不思議である…


「私は剣にも人にもなれる。それにこの見た目だけど強さは保証するから。安心して私を使役してほしい。」


「そうは言われても…俺はそもそも魔法の使い方も知らないぞ?」


今度はセレンがかたまった。


「え?…使ったこともないの?」


「ああ。全く無い。一応使えるらしいが…」


セレンがひどく呆れたような疲れた表情をしている。ユウはずっと不思議そうな目でこちらの会話を見続けている。


セレンは深くため息を付いた。

「はぁ、しょうがない。私が使い方を教えてやろう。…思念を共有させてもらおうか。」


そのとき、脳に膨大なイメージが流れてきた。そのほとんどは理解できないものだったが、ごく一部は自然と理解でき、セレンの使い方が一瞬で理解させられたのだと分かったとき。

俺はまたもや意識がなくなった。



  ドゴォォォォォォォン!!


轟音で目を覚ます。


「おい、何事だ?」

周囲を見渡すと一部の天井の岩が崩れ落ちている。

隣で神妙な面持ちのセレンがこう答えた。


「これは私の封印が解けたことが原因だね。おそらくヤツの封印も解けたのだろう…」


「この洞窟はセレンを封印することが目的の場所だったから、おそらくもうすぐ消滅するということね。早く脱出しましょう!」


ユウが脱出するよう促す。だがセレンがそれを言葉で引き止める。


「まあ待ってほしい。ここでリュウに戦闘体験をさせてみよう。なに、負けることはないさ。それにここからどうやって出るか分からないだろう?」


たしかに脱出法は分からない。さっき手に入れた魔法を使えるというのなら使ってみたいという好奇心が俺の中で勝ったのは確かだ。


「…仕方ないわね。セレン、ちゃんと脱出はできるんでしょうね?」


不安な様子は拭いきれていないが、それでもユウは渋々了承したようだ。


「ああ、大丈夫。そして今から戦ってもらうのは、私の守護獣としてここに共に封印されたホーグ君だ。」


その言葉と同時に俺たちが落ちてきた穴が再び口を開け、空から巨大な翼を持った守護獣が降りてきた。


ユウは再三動揺している。

「まさか…グリフォン!?」


セレンがこう告げた。

「さあ、私の盟友であるホーグと闘い、勝つことができれば外へ連れて行ってもらおう。リュウが私の力をどこまで引き出せるかだな。」


なるほど、そういうことか。あの膨大な魔力を誇るセレンの守護獣だ。そう簡単に勝てる相手ではないだろう。だがこれは最初の試練だ。


「ああ。絶対に勝ってみせる!セレン、俺はお前にふさわしい相棒になってみせるぜ!」


セレンはその声に合わせて剣の姿になり、俺の手に握られた。



伝説と伝説が生み出す最初の闘いが始まろうとしていた―




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第3話ありがとうございました!


いやー膝枕は2話じゃなくここでできました。我ながらそこはいい伏線(?)になったかなぁと笑。

さて、セレンと契約し、ホーグ(君)ことグリフォンとの戦いが始まりますね。

さすがに殺し合いではなく実力だめしのような戦闘なので色々魔法×剣技の技を生み出せたらいいなと思ってます。


セレン・セルペ/セルペ洞窟のセルペという名前ですが、セルペというのはとある生物のイタリア語(スペイン語)をもじってつけました。絵が下手なのでイメージしかもてませんがどういう風にそれを出していくか非常に悩みどころです。


第4話はまだ考え中なのでゆるりとお待ち下さい!

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エクリプティック・エレメンツ オガネス @oganes-118

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