#002 洞窟の秘密

第2話始まります。


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「アクアブレス!」


ユウの声に応じてマリンが口から水を放射した。


「ゴァァァァァ!!」


ゴブリンにはかなり効いているようだ。

ゴブリンが殴りかかってくるが、マリンは華麗によけ続けている。


「ゴォォォ!」


ゴブリンの口から泥のような液体が吐き出される。


「にゃぁ!」


マリンに直撃するが、こちらはほとんど効いていないようだ。

どうやら相性があるのか、レベルの差なのか、その両方か。

おそらくは両方だろう。マリンはゴブリンの攻撃を全く意に介さず、ユウの指示に従いながら淡々と相手を攻め続けている。


「これで終わりよ!ウェルテクス!」


マリンから放たれた水の渦がゴブリンを飲み込み、ゴブリンは倒された。


シュピーーン


不思議な音と共にゴブリンも水の魔法も跡形もなく消えていた。


(ユウは強いな…そして魔法はすごいな…俺も使ってみたい!)

その想いを心に秘めながらユウにねぎらいの言葉をかける。


「ありがとう。強いんだなユウもその猫も。」


ユウは余裕の笑みを浮かべているが、マリンは妙に俺のことを睨んでくる。


「そんなことないわよ。強いのは私だけじゃなくてマリンよ。マリンの力がないと何もできないもの。」

「それでもだ。助かったぜ、ありがとうな。」


少し沈黙が続いたところでふと尋ねる。


「マリンって言ってたか?その猫はさっき言ってた使い魔ってやつなのか?」

「そうね。マリンは私が6歳の時に契約した使い魔よ。なぜかあなたをそんなに好きではないみたいだけれど。何か悪いことでもしたの?」


顕現した時からずっと睨まれているような気がする。しかし当然何もしてないし、身に覚えもない。


「いや、全く心当たりがないんだが…記憶を失う前にでも会ってるのか?」


するとマリンはやれやれと肩をすくめた-ように見えた。


「そんなはずはないわ。だって間違いなく初対面だもの。多分リュウは異端児ね。」


ユウが自信満々に言うものだからそうなのだろう。しかし異端児とは随分な言われようだ…


「リュウは水属性の魔法を使える波動を放っているわ。でもあなたはアクア王国の国民じゃない。使える属性と生まれた国が一致しない魔法使いを異端児と言うのよ。」


ということは俺の生まれは残り3国に絞られたということか。それより水魔法が使えると言うならぜひユウに教えてもらいたいものだ。

そんな思いが顔に出ていたのか、


「そんな顔しなくてもあとでちゃんと教えてあげるわ。それに使い魔との契約も手伝ってあげる。」


なんとありがたいことか。ユウと巡り会えたのはまさしく運命だったと言えよう。


「感謝してる。ユウに会えて良かったよ。」


するとユウは顔を背けて


「い…いいからさっさとお宝のところまで行くわよ!」


と言ってまたずんずんと歩いていってしまった。



その後何度かゴブリンや、スライムという魔物たちと戦いながら(俺は戦っていないが)進み、精霊光と湿気を強く感じていた。


「だいぶ明るく感じるが、もうすぐつきそうなのか?」


ユウにそう尋ねると、思いがけぬ答えが返ってきた。


「おそらくもうついているわ。このあたりでマリンが突然強く魔力を放つようになったから、何かが隠されているのだと思うわ。今までもそうだったのよ。貴重な宝に近づくほど魔力が大きくなるの。」


なるほど妙に湿っぽいと思ったのはそういうことなのかもしれない。顕現はしていないが魔力が高まっているのだという。ここは行き止まりでもない、ただの通路だ。しかしさっきまで頼りにしていた精霊光の道がはっきりしないのも事実。となれば一体どこにあるのだろうか?


「隠し扉ね。壁のどこかを押してみたら扉になってるという仕組みがよくあるのよ。手分けして探しましょ。」


言われるがまま周辺の壁を押してみる。


「おい、何も出ないぞ?どうなってるんだ?」

「おかしいわね…絶対にそうだと思ったのだけれど…」


ユウも動揺しているようだ。するとふとマリンが顕現した。なるほど、かなり光が増している気がする。顕現時の眩しさにももうなれたものだが…


「マリン、どうしたの?自分から出てくるなんて珍しいじゃない。」


ユウがそう問いかけるが、マリンは無視しているようだ。

マリンが通路に立ち、足で地面をつつきながらこちらを見ている。


ユウがマリンに近づき、抱きかかえようとしたその時、


  ゴゴゴゴゴゴゴ


ユウが立っている地面が突然穴となり、マリンが中へ落ちていった。


「ユウ!危ない!!」

とっさに手を伸ばし、ユウの手を掴む。

「耐えるんだ!」

必死に引っ張りあげようとする。だがどうにも力が足りず、支えるだけで精いっぱいだ。しかも穴はどんどんひろがっている。


「マリンが…マリンが…」

今にも泣き出しそうな表情で下を見ているユウ。すると、突然浮遊感を足元に感じた次の瞬間。


「うぁぁぁぁぁぁ!」


いつの間にか壁にまで穴が達しており、俺はユウと共に穴へ吸い込まれてしまった。



(どこだここは…柔らかいな…)

どうやら柔らかいところに寝ているようだが洞窟で落ちたのにこんな場所があるはずがないが…


「目が覚めた?」

ユウの声が聞こえてくる。目を開けると眼前にユウの顔があった

「ちょっと、早く降りてよね。」

少し怒ったようにユウが言ってくる。


「ああ、すまん…」

降りて振り返ってみると、そこには巨大なクッションがあった。

(なんだこれは!?)


「戻って!マリン!」

すると目の前の巨大クッションがみるみるうちにしぼんで―猫の姿になった。


「マリンだったのか!?」

どうやら俺たちがいたのはマリンの上だったらしいが…


「私たちが落ちた時、マリンが下で自分の意思で広がって受け止めてくれたの。」


なるほど、だから2人とも無傷でいられているのか。マリンが妙にドヤ顔をしているように思えた。助けられたのだから文句はないが、煽られているようで情けない。


「おそらくここが宝の間ね。さぁ、探しましょう?」

隠し扉ではなく隠し床だったということだろう。ようやく目標にたどり着けたようだ。


「…あれ?なぁ、ユウ。マリンはどこいった?」

顕現したままでいたはずのマリンがどこかへ消えている。


「おかしいわね…いったんマリンを探してもいいかしら?魔力の跡をたどるわ。」

そう言って手を空中にかざしながら歩きだした。


「この先にいるみたいね。」

どうやら発見したらしい。だが、この先からものすごい眩さと強大な魔力を感じる。ユウは気づいていないのだろうか?


(いや、おそらくこの先にマリンと、そして宝があるのだろう。だからこそ迷いなく進んでいるに違いない。)


「ここね。」

ユウが壁の前で立ち止まった。

「いや、壁だぞ? ってこれがまさか…」

「そう。これが隠し扉、よ。」


そう言って壁に手をあけ、現れた扉を押し開けたユウの表情には、

勝ち誇ったような汚名挽回だというような少し複雑な心境が出ていたとか。



突如視界が開けた。ユウが中央に佇むマリンへとかけよる。だがマリンは反応を示さない。ユウが抱えてようやく気がついたようにも見えた。



『ようこそ、秘宝の間へ』


突然脳に不思議な声が響いた時、部屋の中央には奇妙な形の剣が刺さっていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー


第2話ご覧いただきありがとうございました。

落下後、ユウに膝枕をして貰おうか悩みました。非常に。

しかし、マリンにはユウを無傷で救って欲しかったのと、力の一端を見せておきたかったのでマリンにクッションになってもらいました。

ちなみに落ちてから目覚めるまでそう時間は経ってないです。


次回もよろしくお願いします。


追記:マリンをアクアと誤植して進めていました。訂正は完了済みです。指摘ありがとう!





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