エクリプティック・エレメンツ

オガネス

#001 運命の歯車

発掘していただき感謝です!オガネスと申しますよろしくおねがいします。本編どうぞ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 少年は目を覚ます。

 一筋の光が差すだけの、深く闇に沈んだ洞窟の奥で。

 それが伝説の始まりであった。



「どこなの?ここ…」


透き通るような海色をした髪の少女は迷っていた。洞窟探検に来たのだが、帰る出口を見失ってしまったのである。


「魔鉱石をゲットできても帰れなかったら意味がないじゃない…」


辺り一帯は真っ暗。まさに闇の中である。


(すごく声が響くわね…火の魔法が使えたら周りを照らすこともできたんでしょうけど私にはできない…)


壁沿いを歩いてさまようばかり。このままでは一生出られないような気もしてくる。


(またお父様に叱られてしまうわ…いや、叱ってもらうことももうできないかもしれないわね)


そしてまた少女は歩き出した。



「どこだ?ここは…」


黒髪の少年は目覚めた。ふと目を覚ますとそこは闇の中であった。曖昧な記憶。なぜここに自分がいるのか、見当もつかぬまま彼はそこにいた。


(硬い地面、岩の壁、暗闇…岩窟?わからないが…どうにか出れないものか)


辺り一帯は真っ暗。しかしほんのり淡い光が感じられる。


「とりあえずあっちに行ってみるか。」


彼が歩みだそうとしたその時。

コッ  コッ  コッ


(誰かがこちらへ来ている?ひとまず隠れてやり過ごすか)


そして少年は壁に隠れた。



「「えっ…」」


何かに触れる感覚。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」


高い声の絶叫が響き渡る。


「ちょっ、落ち着け!静かにしてくれ!な?」


そこには叫び声に狼狽する少年と驚き震える少女の姿があった。



「ごめんなさい。取り乱してしまいましたわ。まさかこんな洞窟に他のだれかがいるとは思いもしませんでしたので…名を何と言いますの」


少女がそう尋ねてくる。


「俺の名前はリュウだ…多分。君は?」

いささか曖昧な返事になってしまったが、彼女が気に留めたのはそこではなく…


「わたくしの名をきくとはどういうことですの?あなた、どの国の人なのですか?」


…どういうことだろう。


「俺はほとんど記憶がないみたいなんだ。どこで生まれたかも分からないし、どんな国があるのかも覚えていない。」


「そうなんですのね…特別に名乗って差し上げますわ。わたくしの名はユウ・アクア。アクア王国の第2王女です。」


俺は硬直した。


(王女だと?この少女が?というかなんでこんなとこに王族がいるんだ!?)


次々と疑問が湧き俺が言葉を紡げずにいると、まるで俺の思考を読んだかのように、


「わたくしは王族といっても王位継承者ではありませんから、こうして冒険に行くことも普通ですのよ?」


…そういうものなのだろうか。

少し頬を赤らめながら王女が続けた。


「それから先ほどは偉そうに名乗りましたがわたくしのことはユウと呼んでくれてかまいませんわ。歳も同じくらいでしょう?」


自分の年齢は覚えていないが、王女がそういうのだから間違いではないのだろう。ようやく落ち着きを取り戻し、


「いや、王女様のことを呼び捨てなどできません。それにおそらくこれっきりでしょうから。」


と返答する。しかしどこか気に召さなかったのか、ユウ王女が不満げな表情をしている。


「これは命令ですわ。わたくしのことはくれぐれもユウと呼ぶように!さ、ここから出ますわよ!」


なぜか怒ったようになかば強引に話を打ち切られ、ユウは歩き出してしまった。命令といわれてしまえば従うしかないのだろうが、歩き出してからなかなか顔を見あわせてもらうことはできなかった。



沈黙の中しばらく歩いたあと、ふいにユウが話しかけてきた。


「記憶喪失って言ってたわよね。どこまで記憶があるの?」


当然の疑問だ。だがそれは俺にも分からないことだった。


「それが俺にも分からないんだ。名前しか覚えてなくて、どうやってこの洞窟に来たのかも覚えていないし、それ以前に自分がどう育ってきたかも覚えてないんだ。」


少し冷たい返答に聞こえたかもしれないが、事実だから致し方ないだろう。


「そうね、悪いことを聞いたわ。それで…こっちが出口だっていう確証はあるの?」


さすが王族というか、落ち着いている。


「わからないが…淡い光が漏れてるように感じるし進むしかないんじゃないか?」


かなり歩いたような気もするが出口は一向に現れない。少し休むか提案しようとしたそのとき、


「リュウ、この光を感じ取れるの?」


慌てたようにユウが尋ねてくる。


「感じるも何も、うっすら光ってるじゃないか。外からの光じゃないのか?」


「外光なんかじゃないわ。これは精霊光よ。魔法を使う素質があるものにしか感じ取れないものなのだけれど…リュウも魔法を使えたのね。」


魔法という概念そのものは脳にある。だが自分が魔法を使えるとは分からなかったし、いざ使えるといわれても使い方などわかるはずもなかった。それよりも気になったのは


「この光が外光じゃないということはこっちに進んでも外に出れないのか?というかなんで精霊光に向かって歩いてるんだ?」


これは出口に向かって歩いていると思って聞かなかった俺が悪い。

俺の問いに対して、ユウは


「わたしは冒険に来たといったでしょう?ここに眠るというお宝を探しに来てるのよ。」


まったくもって初耳である。


「この強い精霊光の先に間違いなくお宝があるわ!一緒に行きましょう!」


王女様の目が爛々としてきたようである。自力で脱出しようとするよりはついていったほうが良いだろう、と思いしたがったこの時の考えを後悔することになるとは、今のリュウはまだ知らない。



「で、ここってそもそもどういう場所なんだ?」


この洞窟はいったいどこにあってどういう所なのか。そしてお宝とはなんなのか。とにかく分からない事だらけである。


「この世界のことから説明するわね。まず4つの大きな王国が一つの領域を囲むように存在している。その領域に入るには条件を満たさないといけない。で、この洞窟はアクア王国の辺境にあるセルペ洞窟で、数百年前の秘剣が眠っているらしいわ。」


ということは一応ユウの領地内のようだ。大まかな世界構造だけは分かったし、あとはあるかわからないお宝探しにつきあえばなんとかなるだろう…

  ドン ドン

「お、おいなんか物騒な音が聞こえるんだが…」

近くで何か物音が聞こえる。

  ドン ドン ドン

「安心して。ゴブリンっていう緑色で棍棒を持った魔物だと思うわ。」


ユウは落ち着き払っている。


「魔物!?大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。ここに来るまでも倒してきてるし。忘れたの?私は魔法使いなのよ?」


ここまで冷静にいられると自然と自分も落ち着きを取り戻してきた。


「その、俺も魔法が使えるんだろ?…どう使うかはわかんないが…」


精霊光を感じ取れるのは魔法が使える証だと言っていたのを思い出す。だが、


「それはきっと無理ね。魔法を使うには媒介する使い魔が必要なのよ。リュウにはいないでしょう?」


どうやら無理なようだ。自分に使い魔がいる記憶も感覚もない。ここは潔くユウに任せるしかないようである。


「足手まといにならないよう隠れているよ。すまないがよろしく頼む。」

  ドン!

壁の岩をたたき割りながら現れたのはユウが言った通りの特徴をした魔物、ゴブリンが3体。ユウはそれにも動じた様子はない。

すると、ユウの耳飾りが光り眩い閃光を放った!

思わず目をかばう。ようやく眩しさがなくなり、視界が開けるとそこには…


「…ネコ?」


1匹のネコが堂々とした様子でユウの前に立っていた。俺のつぶやきはユウには聞こえていないようだが、ネコがちらりと俺の方を見て鼻を鳴らしたような気がした。


「行くわよ、マリン!」「にゃぉ!」

「ゴォォォォォォ!!」


ユウとネコ-改めマリンの声とゴブリンたちの咆哮が重なり、始まりの戦いの火蓋が切って落とされた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第1話ご覧いただきありがとうございます。

このような感じで今のところ各話3000字くらいで書こうと思ってます!

適宜投稿していく所存ですので、駄文ですが今後も読んでください!とてもとても喜びます!

ご意見もお待ちしております。批評も甘んじて受け入れます。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る