第3話「人気モデルはワナビーブルー」3

明日乃の叫びに呼応してパッドが光り、そして明日乃の姿は美瑠と同じく、特撮ヒーローさながらの姿へと変わった

そしてその姿は美瑠と違い、青色だった


「変身したことによってキミの身体能力は大幅に向上している、美瑠と協力して敵を倒すんだ!」


「でも、留子を傷付けるなんてできないよ」


「あいつを倒さないとキミの知り合いは元には戻らないんだ」


「...わかった。少し我慢してね、留子!」


明日乃は高く飛び上がりアキラメの化身の頭上から落下する勢いでかかと落としを浴びせた

よろけるアキラメの化身に美瑠が追撃で斬りつけた


「くそぉ!邪魔者が1人増えたか!アキラメの化身、お前の力はそんなもんじゃないだろぉ!」


コーカイがアキラメの化身へエネルギーを送る

アキラメの化身は咆哮をあげると共に明日乃へパンチを浴びせた

先程よりスピードもパワーも明らかに向上している。明日乃は防御体勢をとったが吹き飛ばされ建物に叩き付けられた


「うおおおおお!!!」


美瑠が剣を振り上げとびかかるが簡単には叩き落とされてしまう


「くっ...パワーアップなんてズルでしょ...」


美瑠は剣を支えにしてよろけながらも起き上がるがアキラメの化身の拳が迫っていた

美瑠は直撃を覚悟して目を閉じた

その時、突然アキラメの化身がよろけ、体勢を崩した


美瑠は恐る恐る目を開けると、空から赤いヒロインが降りてきた


「あ、あなたは...また...」


赤いヒロインは何も言わず剣を構え、アキラメの化身へと飛びかかり剣を振り下ろす

アキラメの化身がダメージを負い、ついに倒れた


赤いヒロインは両手で剣を握り、頭上へと構えそして振り下ろすと剣から衝撃波のようなものが発生しアキラメの化身へと直撃

アキラメの化身の姿が消滅してゆき、やがて1人の女性がその跡に倒れていた


「くそぉ!くそぉ!またお前かぁ!次はこうはいかんぞ!覚えてろ!」


コーカイが悔しそうに姿を消す

それを確認すると赤いヒロインは走り去った


「留子!」


明日乃が倒れている女性に駆け寄り身体を抱き抱える

顔に耳を近づけると微かに呼吸が聞こえる


「よかった...生きてる...」


「あの...須田さん...」


少し遠慮がちに美瑠が背後から声をかけた


「話は後でゆっくり聞きます、今は彼女達を運ぶのを手伝ってくれませんか?」


「はい...!」




CM撮影現場での怪物騒動から数日後、明日乃は雑誌の撮影のためにスタジオの控え室にいた


「聞いてると思うけど今日の撮影は明日乃の他にウチの事務所から持手留子もでるこが呼ばれてるから」


「はい、楽しみです。」


そう微笑む明日乃のその言葉、彼女の本心なんだと今ならハッキリと理解できる

マネージャーはあの日の事を思い出すように一瞬、自分の手に視線を落とした


「しつこいようだけど、本当に身体は何ともないのよね?」


「はい、かすり傷ひとつありませんし、痛む所もありません。そちらは?」


「えぇ、大丈夫よ。ありがとう」


そんなやりとりの最中、控え室の扉がノックされた

マネージャーが扉を開けるとそこにいたのは留子だった


「あの...その...明日乃、き、今日はよろしく」


「留子、こうして2人で撮影するのは初めてだよね?すごく楽しみだよ」


「あ、ふ、ふん!確かに2人きりは今回が初めてね。だけどこれからは何回も共演してみせるわ!アナタがアタシの顔を見飽きるくらいにね」


「楽しみだよ、これからもお互いに頑張ろうね」


明日乃の言葉に留子は照れ臭そうに顔を背ける

そう、いつだって彼女は彼女なりの伝え方で真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる

マネージャーはそんな2人を微笑ましく眺めていた

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