④悪党ギルド【ルルグ聖騎士団・デジーマ島支部】
ヤザが用心棒をしている【ルルグ聖騎士団・デジーマ島支部】の悪党ギルドに向かう道、弓矢を持ったエルフ姿でクケ子とレミファの後からついていく、ヲワカがクケ子に質問をする。
「彩夏どのは、どうしてレザリムスで、ガイコツになってまで傭兵を続けているでありんすか?」
「レザリムスにいる時は、クケ子でいいよ……それにあたし、本当なら彩夏って名前じゃなかったかも知れないから」
「それは、どういう意味でありんす?」
歩きながらクケ子こと、彩夏が自分の名前について語る。
「あたしが生まれたのは夏の夕暮れでね……その時、両親は病室で『カナ』って名前をつけようと考えていたらしいんだ」
「カナでありんすか?」
「あたしの家の名字は、
「架多……カナ? カタカナ? でありんすか」
「カナって名前に決定する寸前に、外からセミの声でカナカナカナカナカナって鳴き声が……それで、急きょ変更して彩夏に……ちなみに弟の拓実の時は『
二歳児だった、あたしが感じわるぅっ言ったら拓実に決まったらしくて。そんなコト言ったのぜんぜん覚えていないけれど……あたしが、なんでレザリムスで傭兵を続けている理由は、ヤザを今回の旅の仲間にできたら話してあげる」
「カタカナと、漢字でありんすか」
やがてクケ子たちは、白ギルドと道を挟んだ反対側にある黒ギルドに到着した。
西部劇の酒場の扉のようなスイングドアを開けて、建物の中に入ったクケ子たちを。
食堂にいた人相が悪い、顔や体に傷がある男たちがギョロと睨む。
ルルグ聖騎士団・デジーマ島支部とは名ばかりで、実際に建物中にいたのは騎士防具や甲冑も装着していない。
海賊崩れの連中だった。
アイパッチをした男が凄んだ声で言った。
「何か用か?」
クケ子が聞く。
「ここに、ヤザいる?」
「ヤザ? あぁ、あのヒゲ面で気が小せぇ。剣ばかりやたらと持った、見かけ倒しの大男か……ボスが用心棒の流血契約で、雇ったが使えやしねぇ……ヤツなら奥の部屋にいるよ」
「ありがとう」
ズカズカと進むクケ子たちに、殺気立つ男たち。
「てめぇ! ちょっと待て! 殴り込みか?」
クケ子は、男たちの声を無視して奥の部屋へと進む。
ドアを開けた、部屋の中に大男の魔法戦士が、床に膝を抱えてうつむいて座っていた。
クケ子が大剣を背負ったヤザに言った。
「ヤザ、迎えに来たよ」
顔を上げた、大小の剣を持ったヤザは「ひっ!? 彩夏どのの幽霊でござる! 安らかに成仏してくだされ!」
そう叫ぶと、さらに奥にある部屋の壁を突き破って逃げ込んだ。
「ちょっと! なんで逃げるのよ! 白骨化しているけれど、死んでないから!」
ヤザを追って奥の部屋に入ったクケ子は見た。
狭い檻の中に閉じ込められて、不安そうな顔をしている鬼の男の子と。
黒ギルドのボスが。
新大陸から来たらしい風体の男と、何やら契約を交わしている光景を。
レミファが呟く。
「ここは、人さらいの巣ぜらか?」
海賊帽子をかぶった、黒ギルドのボスが立ち上がって、ヤザに向かって怒鳴る。
「何やってやがる! 誰も通すなと言っておいただろうが! 役立たずのデク用心棒!」
怒鳴られて涙目のヤザ。その時、入り口の方から騒がしい声と銃声が聞こえてきた。
「なんだぁ! おまえらぁ、鬼かぁ! ぐえっ」
「てめぇ! ふざけやが……ぐぅぅぅ」
ヤザが突き破った壁とは別の場所を突き破って、入り口近くにいた黒ギルドのアイパッチ男の体が部屋の中に転がり込んできた。
新しい穴を通って、バッファロー角を頭に生やしたネイティブアメリカカン風の大男が、のっそりと現れる。
バッファロー角の鬼男──【クロム・バッファロー】が言った。
「バッファロー、悪いヤツ許さない」
クロム・バッファローに続いて、東洋風のドリル角童顔の鬼青年──黄金の【ルチル・チル】が、クケ子たちを見て言った。
「あれ? また会ったね」
ルチル・チルに続いて、細い鍼角の踊り子鬼──【ニッケル嬢】が酒ビンを手に現れ。
最後に腰に拳銃と、日本刀を提げた炎角のカウガール風の鬼女──【オニ・キッス】が現れた。
オニ・キッスを見た瞬間、新大陸から来た男の顔が青ざめる。
「ひっ!? まさか、海を渡って追ってきたのか! うわぁぁ!」
恐怖におののく、新大陸の男。
黒ギルドの海賊ボスが、キッスに質問する。
「なんだ、おまえたちは?」
静かな口調で答えるキッス。
「人滅する刃【
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