⑤VSしていない『赤いガイコツ傭兵チーム』と『邪狩流チーム』ラスト
黒ギルドのボスが叫んで、食堂にいるはずの仲間を呼ぶ──返事がない。
必死に仲間を呼んでいる海賊ボスに、キッスが言った。
「ムダだ、入り口近くの食堂にいた連中は、眠りの弾丸で眠ってもらった今は夢の中だ」
海賊ボスが、ヤザに向かって怒鳴る。
「なに突っ立ってやがる! こういう時にオレと大陸からの客人を守るために、おまえを用心棒で雇ったんだろうが! 仕事しろ! こっちには流血の契約書があるんだ!」
ヤザが、邪狩流たちの前に立ちはだかる。
ヲワカが言った。
「流血契約書──護衛する相手が契約した領域内で血を流さない限りは、永遠に守り続ける妖精系の契約書でありんす……ヤザは騙されて契約させられたでありんすか? こうなったからには、あきちたちもヤザに加勢するしか無いでありんす」
赤いガイコツ傭兵チームと、邪狩摩チームが対峙する。
ヤザと向かい合って立つ、クロム・バッファローが言った。
「おまえ、悪いヤツと違う目を見ればわかる……オレ、おまえとは戦いたくない」
「拙者も同じでござる、だが契約した限りはどうにもならないでござる」
フェイスガードをつけて、魔法のスティックを持ったレミファには。金属の陰陽円盤状の武器を持った、ルチル・チルが相手をする。
「撃ってこい魔法攻撃してこい、仕掛けたトラップで全部反射してやる」
「そっちこそ、物理攻撃してこい……オレは魔法は使えない、悪人じゃない相手は傷つけたく無い」
矢をクロスボウにセットして構えるヲワカと、額の鍼角を一本引き抜き酒を飲みながら対峙するニッケル嬢。
ニッケルの角は引き抜いても、すぐに小指の先ほどの鍼角が生えてきて、元の長さの角に成長する。
「鬼でも悪い人には見えないでありんす」
「あたしも、あんたが悪いダークエルフには見えない……この、大陸の酒もなかなかイケるわね」
日本刀の柄に手を掛けて間合いをとって構えるクケ子と、人滅する刃の鬼女キッス。
キッスが言った。
「その刀、あたしの持っている刀と似ているな……同じ刀匠が打った刀かもな」
「そうかもね、さっき眠りの弾丸って言っていたけれど、どういう意味?」
「あたしが持っている拳銃から発射される弾丸に撃たれると、眠りに堕ちる……悪党は悪夢を見る」
「なるほど、雑魚を殺してはいないんだ」
刀の柄に手を掛けたまま、クケ子はボーガンを構えているヲワカに聞いた。
ヲワカは状況によって、引き弓とボーガンのどちらも使える。
「ヲワカ、ヤザが契約させられた流血契約書って、契約領域範囲ってあるの?」
「たぶん、このデジーマ島の領域内まででありんす。この島内でヤザが護衛する契約相手が血を流さない限りはヤザは島から出られないでありんす」
二人の話しを聞いていたキッスが言った。
「そういうコトなら」
キッスの姿が疾風のごとく移動して、海賊ボスと大陸から追ってきた男の近くに瞬時に移動する。
「ひっ!?」
「なにっ!?」
キッスの駿足に、愕然としている男二人の頭をキッスはつかむと、顔面同士を衝突させた。
「ぐはぁぁ!」
鼻血を出して、仰け反る男二人。
キッスが、クケ子に向かって言った。
「これで血が流れたぞ」
咆哮したヤザが、クルッと体の向きを黒ギルドボスの方に向ける。
「うおぉぉぉ!」
鞘から抜いた短剣を床に突き刺すヤザ。
刺した床の傷から、ワラワラと湧いてくるミニュチュアサイズのヤザ。
ミニヤザたちは、横一列に並び、また本体と同じように床に短剣を刺す。
さらに、一回り小さいプチヤザたちがワラワラと湧いてくる……そのプチヤザたちが、床に短剣を突き刺すとアリのような小さいアリヤザが出てきて……さらに……アリヤザが短剣を床に。
魔法戦士『
発生させた分身は、ヤザが剣を刺した場所から引き抜けば消滅する。分身を出している間はヤザは、その場から動くコトはできない。
無数の小さなヤザが、体を登ってくるのを海賊ボスは、悲鳴をあげて叩き落としの足踏みダンスをする。
落とされて踏み潰されて消えても、別のヤザが次々と体を登ってくる。
身体中に群がるヤザに許しを請う海賊ボス。
「ひーっ、オレが悪かった! 許してくれぇ! ぎゃあぁぁ!」
新大陸から来た男が、どさくさに紛れて逃げ出そうとしたのを、邪狩流のオニ・キッスは見逃さなかった。
眠りの弾丸が発射されて、破裂する弾丸が命中した男は、そのまま倒れ大イビキをかいて眠りに堕ちた。
「ぐおぉぉ……ギリギリギリギリ」
イビキと歯軋りをしている男の体を、肩に担ぐクロム・バッファロー。
檻から鬼の子供を救い出して、優しく抱き締めるキッス。
「もう大丈夫……さあ、お母さんとお父さんの所に帰ろうね」
クケ子がキッスに訊ねる。
「もしかして、鬼の子供を救い出すためだけに、海を渡ってきたの?」
「それだけの理由があれば十分だろう、眠らせた男は別の場所で仕置きをする……じゃあな、もう二度と会うことはないだろうが」
邪狩流チームが去ると、クケ子がヤザに言った。
「ヤザ、これでデジーマ島から心置きなく出れるね……力を貸して、魔勇者の娘を倒すために」
床から短剣を抜いたヤザは一言。
「承知した」
そう言いながら、少し嬉しそうにうなづいた。
第一回目の漫遊旅の仲間を集めて~おわり~
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