赤いガイコツ姉ちゃんの二回目の旅立ち

①もどって来たぜ♪東方地域

 異界大陸国【レザリムス】東方地域の中区中核都市の一つ──赤いガイコツ傭兵の彩夏は、生首魔女っ子のレミファを脇に抱えて、自分の世界からレザリムスにもどってきた。

 雑踏の市場街に、立った彩夏が言った。

「やっぱり、活気があっていいわね東方地域の中核都市は……で、これからどうするの?」

「まずは、魔勇者の娘を倒すために、前回の旅の仲間を探し出さなければ……そして、お隠れになった、魔王娘さまを見つけ出さねば……と、その前に」

 彩夏に抱えられた、生首レミファはキョロキョロと周囲を見て言った。


「まずは彩夏どのは、あそこのギルドに行って傭兵の再登録をしなければ……その姿では、宿も泊まれませんから」

「わかった、再登録ね……まだ、こっちの世界に作ったギルド口座あるかな? ところでレミファ。

前々から疑問だったんだけれど、どうしてあたしに対して、そんな畏まったしゃべり方なの?」

「彩夏どのの、了承を得ないままを魔勇者を倒すために、強制召喚してしまいましたので……謝罪する気持ちで」

「そんなの気にしないでいいから、もう少し砕けたしゃべり方でもいいから」

「そうですか……では少しお国訛りが出ますが『○○どの』の敬称は残したまま、少し砕けたしゃべり方で……はぁ、肩はないけれど。やっと肩の力が抜けたしゃべり方できる……ぜら」

「……ぜら?」

「これが、あたしの田舎のしゃべり方ぜら……変ぜらか?」

「変じゃない……けれど」

「良かったぜら、彩夏どのから変に思われるかと不安だったぜら……ギルドに行って再登録するぜら」

 彩夏とレミファは、食堂と宿泊場を兼ねた、ギルド登録場に向かった。

 脇に生首を抱えた赤いガイコツ傭兵の彩夏は、吊るされた飛沫防止のビニールシートで遮断された登録場のパソコンの前に座っている女性に向かって言った。

「彩夏と言いますけれど、ギルドの再登録お願いします……姿が変わっちゃったので」


 ビニールシート越しの女性が、パソコンを操作する。

「はい、再登録手続きですね……ちょっと待っていてくださいね」

 ここ東方地域は、彩夏が居る世界との交流が盛んなので、彩夏の世界の文明も浸透している。

 待っている間、彩夏がとんがり帽子を被った首だけレミファに訊ねる。

「レミファは、再登録しなくてもいいの?」

「あたしは大丈夫ぜら、魔女とか魔導師は、個別の魔紋永久登録ぜら」

「指紋認証とか、網膜認証みたいなもんか……なんとなく、納得」


 ギルド酒場の中には彩夏の居た世界から、さまざまな理由で時空を越えて、レザリムスにやって来た者たちもいた。

 ある席では、忍び装束の忍者と和装姿の鑑定士が会話をしていた。

 忍者が鑑定士に訊ねる。

「その聖剣は、それほど価値のあるモノでござるか?」

「聖剣のココに刀匠の表銘があるでしょう……鞘の装飾も匠の職人技です、いい仕事していますねぇ。わたしの世界に持っていって、宝物の鑑定番組で鑑定したら高値評価になりますね……この異世界から、持ち出せたらですが」


 しばらくして、パソコン操作をしていた女性が言った。

「変ですね『彩夏』での登録はありませんね」

「そんなはずは……あっ! そうか!」

 彩夏は思い出したように、ガイコツの手を打ち鳴らす。

「ゲームやっている最中に、こっちの世界に召喚されたから……ゲームキャラ名登録のノリで、適当なネームを登録したんだった……登録名は確か『カキ・クケ子』」

 ギルドの女性職員が、彩夏が伝えた名前で調べる。

「『カキ・クケ子』さま……登録されています。ずいぶんと姿が変わっちゃいましたね……再登録しますか? では、カメラのレンズを見て……はい、再登録完了しました。これでギルドの口座も使えますからね」


 再登録が終わった彩夏とレミファは、ギルドを出た。

 彩夏がレミファに訊ねる。

「これから、どうするの?」

「まずは、彩夏どののウィッグ〔かつら〕ぜら……丸坊主の頭蓋骨じゃ、普通の人は性別がわからないぜら。そのあとは、あたしの首を入れて持ち運ぶ鳥カゴ買うぜら」

「わかった、彩夏どのって呼び方も堅っくるしいから、今回の旅での呼び方は『クケ子』でいいよ」

「わかったぜら……クケ子で」

 クケ子とレミファは、町のウィッグ専門店に向かった。

 店内には、さまざまなウィッグが売られていた。東方地域はクケ子が居た世界とも交流があるので、クケ子が見たこともある髪型のウィッグも多数あった。


 少し、なよっとしたオネェ系のエルフ男性店主が、入店して棚に並んでいるウィッグを眺めている、クケ子とレミファに話しかけてきた。

「いらっしゃ~い、あらっ、赤いガイコツのお嬢さんと生首の魔女っ子ね……骨盤を一目見れば、男女の違いはわかるわぁ……どんなウィッグをお探しかしら?」

「どんなのって言われても」

「それじゃあ、あたしがいろいろと選んであげるぅ。気に入ったウィッグを買ってもらえればいいわぁ。

生首の魔女っ子はこの台に置いて……と」

 クケ子を鏡の前に連れてきた、オネェ店主は次々と店のウィッグをクケ子の頭蓋骨に被せる。

 歌舞伎の演目、連獅子の白頭。

 中世ヨーロッパの王宮貴族や音楽家が被っていた段々巻き毛のスクエアウィッグ 。

 弥生時代や古墳時代に男性がしていた『みずら』形のウィッグ。

 モヒカン頭。バーコードハゲづら。石川五右衛門ウィッグ。

「女学生オサゲ……猫耳ウィッグ……なんか違うわね……ツインテールに、ポニーテール……いい感じじゃない」

 最終的にクケ子は、赤毛ツインテールと青髪ショートヘアと長めのポニーテール。

 腰まである一本編みのウィッグを購入して店を出た。

 買ったウィッグは、レミファの、どこでも魔法ロッカーに保管された。

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