③いきなり魔勇者と対決?
ガギッという音が聞こえ、彩夏の意識がもどった時──彩夏は、ラスボスの魔勇者が前方に立つ城の広間にいた。
レミファがゾンビから甦った彩夏に言った。
「彩夏どの、魔勇者との最後の戦いですぞ」
周囲をキョロキョロと見回す彩夏。
前方には、黄金に輝く装具に身を包んだ魔勇者がいた。
自分が強いと思い込んでいる勘違いの腐れ召喚勇者で、人がいい女魔王をダマして城から追放して城を乗っ取り。
勇者の肩書きから調子に乗って
戸惑う彩夏。
「えっ!? いつの間に? ラスボスのステージに?」
不敵に笑う魔勇者が言った。
「世界を救った勇者に歯向かう愚か者たち! この一撃で消し去ってくれるわ! オレつぇぇぇぇぇぇ!」
金歯を露出させて笑うメタボ魔勇者が、両腕を頭上に上げると炎の球体が現れた──燃え盛る業火球は、瞬く間に巨大化していく。
魔勇者が哄笑しながら言った。
「わはははははっ! 見たか、オレに向けられている憎悪をエネルギー弾に変えて敵に放つ『勇者玉』を! オレに対する敵意さえも攻撃に利用する!」
魔勇者に向けられている憎悪の業火は、ものすごい勢いで増加する。
「ち、ちょっと勇者玉の成長が早すぎる。制御できない? 暴走しているぅ!? うわっ!」
魔勇者の完全な誤算だった、自分に向けられている人々の憎悪の強さを魔勇者は見誤っていた。
いち速く異変に気づいた、ヲワカとヤザが脱兎のごとく逃げ出す。
逃げるタイミングを逃す、彩夏とレミファ。
憎悪火焔球の重さに耐えきれなくなった、魔勇者が悲鳴を発する。
「ひぃぃぃぃ!?」
魔勇者を押し潰し、大爆発する勇者玉──レミファの体が爆発の衝撃を受けて、バラバラに吹っ飛ぶ。
幸い爆風の勢いが強すぎて延焼は免れ、床に炎が残る中、爆煙が風で晴れると赤いガイコツの傭兵が立っていた。
一瞬のうちに、血肉が爆発の衝撃で削がれて吹っ飛んだ彩夏の人体骨格が、ゆっくりと床に倒れ静寂が訪れた。
しばらくして、赤いガイコツ姿になった彩夏が立ち上がって呟く。
「いたたたっ、いったい何がどうなって?」
自滅した魔勇者の体は、金歯と金の装具を除いて残っていなかった。
「あたしたち、勝ったの? みんなはどこ?」
周囲を見回す彩夏の目に、壁の割れた鏡に映る赤いガイコツのモンスターが映る。
彩夏が日本刀を構えると、鏡の中の赤いスケルトンも同じように刀を構える。
彩夏がセクシーポーズをすると、鏡に映る赤いガイコツも同じようにセクシーポーズをした。
「あたし? 本当に赤い骨格だったんだ……へえ~ビックリ」
壁の一部がエレベーターの扉のように開き、エレベーターボックスのような空間が現れる。
エレベーターに近づくと彩夏。
「そう言えば、ある条件が整えば。元の世界に帰れるって召喚請け負い業のオッチャンが言っていた……魔勇者が倒されたから元の世界に帰る扉が開いたの?」
エレベーターボックスに入ると、開くと閉じるのボタンしかなかった。
レザリムスにこのまま残るか、元のアチの世界に帰るか、選択するボタンだった。
一瞬、考えてから彩夏は閉じるボタンを押した。エレベーターの扉が閉まり次に扉が開いた時──彩夏は自宅近くにある、子供が遊んでいる近所の公園に立っていた。
振り返ると、乗ってきた異世界のエレベーターは消えていた。
「帰って来たんだ……あたしの世界に、家にもどらなきゃ」
遊んでいた子供たちが突然現れた彩夏の姿に怯えて、泣き叫んで公園から逃げる中、赤いガイコツ傭兵の彩夏は懐かしい気持ちで自分の家を目指して歩きはじめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます