第264話 夜明け 4
それから一年が過ぎ、二年が過ぎ、ついに
光源氏と親友となるはずの縁が、結局結ばれなかった、いまは蔵人所の別当となっている
そして、葵の上が発案した『日本地図』が、蝦夷や琉球まで記載され、十年以上の歳月をかけて完成し、ようやく関白の元に届いた頃、産み月になっていた彼女は内裏を下がり、
産所の
帝の特別なおはからいで、派遣された真白の陰陽師たちは、念入りに
葵の上は『座産』という二人の産婆に寄りかかって産む、この時代の主流である出産に挑み、陣痛に苦しみだした二日目の朝、無事に玉のように美しい若君を産み落とし、意識を失う。
兄である
あの日、十七歳になった葵の上が目覚めてから、二人は本当の夫婦として、仲睦まじく暮らしていて、この世界では遅すぎると心配をされていたが、ようやく無事に子宝に恵まれていた。
真っ白な顔で、息も絶え絶えに布団に横たわる、ご自分の北の方、最愛の葵の上を、涙をこらえ、無言で抱きしめている
「でかした! でかしましたぞ! 若君の誕生!! めでたい! 誠にめでたい!」
紫苑は、「わ、わたしが乳母! わたしが乳母になります!」と、生まれる前から、葵の上に頼み込んでいた。彼女はすでに“六”との間に、二人の子を持つ母である。
*
〈 葵の上が出産を終えた数刻後の内裏 〉
帝は、
「関白は“物の怪”の類ではなかろうか?」
彼は、自分が東宮の頃から、「残り僅かな命の年寄り……」それが口癖だが、寿命が尽きる気配はなかった。
帝に等しく寵愛を受けているふたりの
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