第261話 夜明け 1
それから正月が過ぎ、葵の上が目覚めた翌年の春、ついに新しい内裏が完成していた。
東西約220m、南北約303m、真新しい
前にある南庭に植えられた満開の桜の花と、まだ時期には早いはずなのに、新しい帝を祝うように、早くに咲いた橘の花が、夢のような光景を作り出していた。
後宮の
蔵人所など内裏内の他の
紫苑たちが隠れていた『妖怪がいる荒れた海の描かれた豪華な
「まだ終わらんのか? 明日には帝がこちらに戻られるのだ!!」
「早く終わらせたきゃ、黙っててくだせえ!! 相手をしてると、手が止まるんでさぁ!!」
しかしながら、その一角で、もう夜も明けようかという頃、昨日の夕方に急遽呼び出された二人の大工が、引きつった表情の官吏に急かされていた。
官吏は、『
全焼した内裏の再建は、内裏の造営や修理を担当している
「次の現場に行くぞ!!」
「……京見物したかった」
「そんな時間かあるかバカ野郎!!」
「ちょっと、誰か俺の大工道具知らねえか?!」
そんな小さな騒ぎはあったが、
真新しい檜が薫り、大内裏から内裏への路には、早くに咲いていた桜と橘の花弁が、柔らかな日差しの中で、そよ風にゆらゆらと舞う。
十二歳で帝となった朱雀帝は、もう十七歳、国の統治者としてふさわしい立派な青年となり、そのりりしくも、お美しいお姿は、欠けたるところのない、みなが待ち望んだ帝のお姿であった。公卿をはじめ、殿上人たちは尊敬の念しか浮かばぬ。
彼は、帝だけに許される
ご承知の通り、関白のやかたと内裏は目と鼻の先、やはり今回も葵の上の初出仕同様に、大回りをして、羅城門から出発することとなったが、今回は更に豪華絢爛な行列となる。
先導には複数の騎馬の随人(警備)の隊列に、
八角形の
中央にある玉座に腰をかけて、居並ぶ黒の束帯姿の公卿たちを見下ろすと、関白と
御年十八歳を迎えた
***
『小話/杓』
紫苑「落ちましたよ――」
某貴族「あ、これはこれは、失礼を!」杓は、使わない時は、背中のベルト部分に挟んでいる。
紫苑「結構、落ちてたり、落としたりしてますよね」
葵「なくしたら大変よね」
紫苑「本当ですよねー」実は紫苑と知り合うきっかけに、みんな、落としてるけど、気づいてないのでした。
六「鈍感力……」
紫苑「はい?」吞札をもらいにきてる。
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