第245話 入れ替わる光と影 2
「
「姉君、やっとお目覚めになったのですね!」
九歳になった
「あの日、母君が攫われた時、わたくしが強くあれば、このようなことには、ならなかったのに。ごめんなさい」
「
「姉君……」
「
泣きじゃくる
よく見れば、以前、左大臣家に勤めていた御園命婦を始め、母君の側仕えの女房たちが大勢いるようだ。
そうして彼らの延命の努力も虚しく、日を追うごとに体は衰弱し、命の危険が目の前に迫り、この呪いを解くためには、いたしかたなしと、帝や御祖父君、そして
『なにそれ!? 話が元に戻るところだった! あっぶな――!』
「わたしのおかげ、深く感謝するように!」
「……え?」
不思議そうに眺めていると、慌てて御簾の向こうに駆けつけてきた家人に、指示を出していた
ピンクはわたしの耳元で、「お好み焼きとプリンを沢山食べたい!」なんて、親し気に小声で話しかけてくる。
『なんなんだろう、この小さなピンクは? いつの間にというか、ほんと誰?
「あの、一体どちら様でしょうか?」
「なんでわからんと? ほら、わたし!
「……え?」
葵の上は首を傾げる。どうして? というか、なんで髪がピンク色なんだろう? いくら原作から離脱したとはいえ、
「知らないだろうけどさ、この世界では、本名は言っちゃいけないの。色々と、とんでもないことになるの。でも今回は、その本名をわたしが知ってたから、葵ちゃんを陰陽師は、無理やりな力技で助けられたって訳!」
「本名って……どういうこと? え? 本名を知られるだけで、あやつられる!? 好きに扱うことができる? なにそれ超怖い!」
それから葵の上は、口元を両手で押さえながら、元の世界で意識を失ったあとのことを聞いて、ようやく転生前の最後の時に見た看護師の顔と、
「ああ! あの時の看護師!」
「そうそう! あれが
「……なんか時間軸がめちゃめちゃだけど、あれか、それはわたしが物語の中身を、かき回したからかな? 話が“メビウスの輪”になってなきゃいいけど……」
「物語ってなに? とりあえずわたしプリン食べたい! 昨日の夜からずっと葵ちゃんを、横で見張ってたんだから! いま、しっぽ退治したし!」
源氏物語の中身を知らない
「しっぽ?」
「葵ちゃん、昨日の晩、口から黒いトカゲが出てきたよ? その残りのしっぽ、さっき出てきて、わたしが槍で退治したけど」
「おえっ…………」
「大丈夫?」
口からトカゲが出て大丈夫な訳ないやん!! なんとか気を失わなかった葵の上は、口を抑えながらそう思った。
「なんだっけ? ノドにモノが詰まって、仮死状態……あ、白雪姫みたい!」
「それ、リンゴやん! トカゲとぜんぜん違うやん!」
厚手の単衣の上に、帝から見舞いにと、早速送られた
「姫君!」「北の方!」「葵ちゃん!」
フォローは間に合わなかったのである。
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