第236話 修羅場 9
「時代とはいえ、ほんと疲れる。光源氏だけじゃなくて、母親も、超、前世主義者……」
わたしは前世でも来世でもなく、いまの自分の目に映る世界と現実が、大切だと思うんだけど。お寺に寄付して、念仏唱えてれば、いいってもんでもないと思うんだけど。頭おかしくなりそう。
「まあでも、とりあえずこっちは、これでいいとして……」
葵の上は独り言を言いながら、御神刀を両手でかかえ、現実を見つめようと、目を閉じて考える。まだ時々自分を襲う頭痛は治らない。頭痛と共になにかを思い出しそうで、なにも浮かばなかった。
しかし、例のピンク姫は『
と、いうことは、さっき庭にいた僧侶は、絶対に
しばらく考えてみたが、やはり彼女には某有名な推理小説の主人公のように、驚くべき記憶のつまった脳内の博物館は、持ち合わせはなかったので、順守するべき考えをひとつ捨てることにした。
『さよならコンプライアンス……』
「早くここを出て、あの坊主をしばきあげて白状させよう!」
やはり彼女はお姫様には、なりきれない残念な女であった。
「でも、どうやったら、ここから出られるのかな?」
“六”と
しかしながら、周りは
『テレパシ―とか使えないかな?!』
そう思った葵の上は、丹田に精神を集中させると、“六”に向かって、「わたしは無事なので、その坊主を捕まえて下さい」それから
「……やっぱり返事ないか。しょうがない、とりあえず、なんとか上に向かって登って……」
「登ってみるか」そう言いかけた時だった。いきなり
「ひえっ!」
考える時間もなく、思わず自分の頭上に御神刀を両手で持って、勢いよく持ち上げると、穂先は御神刀の
「いった――っ!」
大猿事件の運命の女神の部屋と同じく、岩の中と外ではサイズが変わってしまい、葵の上の大きさは子猫ほどになっていたので、この程度で済んだのは奇跡といえば奇跡だったが、岩の中から助け出された葵の上は、
岩が割れたと同時に、白い世界は姿を再び消していた。空には輝く三つのお月様。
『お月様きれい……』
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