第230話 修羅場 3
実はその時、
たとえ父君の悲願で入内したとはいえ、次期中宮でさえも当然である生まれの『葵の上』や、『
実際、
そんな
それは後宮に入り、后妃となるべく育った姫君たちが備えている、本能に近いほどに教え込まれた、尊き帝の系譜に対する徹底的な身分に対する序列と、礼儀を
にもかかわらず、
彼女の行動は、それほど奇妙であまりにチグハグだった。それが帝とは違い、元皇子として後宮に暮らす后妃たちの教育を受けた心得た暮らしと、外の世界に暮らす姫君たちの極平凡な暮らしのふたつを知る彼に、強い警戒心を持たせたのである。
そんな
もうひとつは、彼女が例の『運命の女神の理想の女性像』たる存在であったことに遠因があり、
そんな彼女の生前の後宮での暗い日々の中に、突如として現れたのが
たとえ自分とはかけ離れた恵まれた存在でも、それを考えるだけで、同情できる方だった。豪華な殿舎でさめざめと泣いてお暮しになるのだろうと思うと、仲良くなれる方だと想像していた。優しい方だとお聞きして、親しくなれる日を心待ちにしていた。
お会いできる日を、仲良くできる日を思えば、息をするのも忘れるほどに幸せな気分になり、そしてなによりも彼女には、自分の大切な光る君が執着していた。帝ですら光る君の笑顔ほどに尊いものはないと言っていたわたくしの皇子が。
なのに……なのにあの女は、わたくしの光る君に興味は示さなくて、無礼ですらあった。でも帝が
「
格子の向こうには小さな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます