第201話 お姫様と魔法使いたち、或いは桜色の小さな稲妻/前編
※この、お姫様と~の、二話の番外編は、まだ、なろうの方で連載をしていたときに、記念企画で、リクエスト募集をした時に、書かせて致いた話ですが、本編にもつながっております。
***
〈 大火の翌朝の早朝 〉
熱々の『バーベキュー御殿』で、大活躍したあと、本来? の槍の姿に戻り、すっかり疲れて眠っていた『龍の姫君』として転生していた
「
あとから知ったことだけれど、それは『この世の音』そう称される
そんなこととは知らない
なぜ彼女が、ここにいるかというと、大火の夜明けに「入りきらない」そう言って、彼女が封印されている大槍の
知らぬ間にまた槍から抜け出して、十二単の桜色の髪のお姫様になってしまった自分に困った
廊下の角から音のした方を、そろそろとのぞくと、平安時代の服装をして笛を持った男の子と、布団にしがみついている男がもうひとり。
「あ――、もう、起きて下さい! もう昼ですよ! 朝餉がきてますよ――! 右大臣家から届いたんですよ――! 朝餉、食べましょうよ! 朝餉!」
「…………」
そう言われても、男は頑として布団から離れず、わたしのお腹は鳴った。そして、いまは昼じゃなくて朝だ。どうやら少年は、寝汚い男を起こそうと、ウソをついているようだった。どうでもいいけど、平安時代からそんなウソついてたんだ。
『それにしても腹が……お腹が減った……』
朝餉……朝ごはんか……、いいなぁ、どこにあるんだろう? でかい家だなあ……いや、屋敷? なにか紙でできた人形(式神の本質が彼女には見えた)は、ヒラヒラ漂っているし、屋敷や空の上に、なぜ
葵の上となった『葵』が合氣道という、いわゆる段持ちは全員が袴を履いている特性上、なんなく袴を捌けたのとは違い、少林寺拳法は袴を履かない。しかもいま履いている袴は、とんでもない長さであったので、邪魔でしかない。
『脱いじゃおうかな?』
そう思った矢先、丁度、よい匂いが漂ってきたので、
「おおぉ―――!」
仕切りのある広い板の間には、三段重ねの『重箱』が六個積みあがっている。横には鉄の茶瓶と湯飲みが六つ。重箱をそっとひとつ開けてみると、一段目には綺麗に丸められた小豆ご飯、二段目と三段目には、とにかく美味しそうなおかずが、これでもかとギッシリ詰まっていた。
もちろんそれは例の『
「ちょっとくらいなら、一段づつなら、ばれないかも知れない……いただきまーす……」
「もう少し……もう一口だけ、もう一口……」そして数刻も立たない間に、『真白の陰陽師』が借りている寝殿から、重箱弁当の中身は最後のひとつを残して、あっと言う間に消失し、少ししてからやってきた“壱”から“四”は唖然とし、“伍”は呆然として空の重箱の横で、気まずそうな顔をしている
「
昨日の大火の騒ぎで、結局ここに明け方近くから泊まっていた“六”は、あとからやってきて、桜色の長い髪で、十二単を
陰陽師のやかたに
一方、六個目の重箱を抱えていた
「誰が“
『決まった!』
内心、大いに焦っていた
集まっていた六人の真白の陰陽師たちが、少し胡散臭げな顔をしていたのは、まあ、いきなり言われてもビックリだよねと
しかも偉そうな啖呵を切ったあと、自称『龍神のお姫様』は、またお弁当を食べはじめていた。
「……本当に“
最後の重箱の中身を、ほとんど食べ終えた頃、不思議そうな顔の“伍”は、お腹空いたなぁと思いつつ、恐る々々聞いてみた。
「もし本当なら……なにか証拠とか見せられません? ほら、龍が持っている
そう言ったのは“弐”だった。当然と言えば当然の質問であったのだが、言われた
困ったな――、あの時は火事場の馬鹿力的な感じだったし、あれ以前に『槍』から抜け出せたことはないんだよね……。龍の
空になった重箱を見つめていると、どこからか地を這うような声がした。声の主は、目つきの悪いアルビノの中高生くらいの男の子。
「貴様、やはり
「ちょっと待て、ちょっとだけ待て……」
あの時どうしたっけな? 今日はわかんないけど、あの時は確か龍になって、あのお姫様たちを助けたいと思って、槍から抜け出せたんだよね。とにかく集中、集中しよう。
『龍になれ、龍になれ、龍になれ……』
「!!!!」
一瞬、
「一応は本物みたいですよ?」
“伍”は、そう言いながら、恐る々々“六”に向かって威嚇するように、小さな火を吹いている『龍』を両手ですくい上げる。
「あの時に力を使い果たして、まだ元の大きさに戻れないんだなきっと」
「“
「……それはいいけど、朝餉どうするんだよ?」
「台盤所に行って米を焚いてこい。元々、お前が当番だろうが」
みなが口々に感想と、朝餉について意見を述べる中、小さな龍を一瞥した“六”は、にべもない言葉を発していた。
「それを網に乗せて焼けば、食べられるかもな」
「なんてこと言うんですか!
「…………」
なぜか気に入らない、そんな顔の“六”であったが、葵の上の名前を出されては、さすがに黙り、“弐”は、「とりあえず、ありあわせで朝餉を用意するしかねーな」そう言いながら、台盤所に向かった。
彼らを本当の悲劇が襲ったのは、その数刻だった。
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