第196話 収まらぬ火の粉 3
ふたりの姿が消えたあと、しばらくボンヤリとした表情で、布団に横たわっていた
「どうかなさいましたか?」
「……いえ、ああ、そういえば、あの第二皇子は、どういった御方なのかしら?」
女房は、今頃そんなことを言い出した姫君を、不思議に思ったが、きっと皇子がいなくなって、ほっとしたのであろうと思い、姫君の身支度をしながら、
「なんでもいまは亡き“今楊貴妃”と呼ばれた
「まあ……」
「浮世離れした美しさは、確かに伝え聞く通りでございましたが……帝の庇護があるいまはともかく、とにかく危ういお立場と……そう聞き及んでおります」
「……もういいわ、少しひとりにしてちょうだい」
「朝餉だけは召し上がって下さいませね」
女房は、そう念を押してから姿を消した。彼女が姿を消すと、
『アノ札ノセイデ 手出シモ出来ズ 外ニ出ルコトスラ 叶ワナカッタケレド コレハ良イ依り代ヲ 見ツケタ……』
鏡に映っていたのは、
なにかの役に立つやも知れぬ、そんな、なんの罪の意識もなく取り置いていた壺の中にある
開かれた扉をすり抜けて、
『タダ 憑リ殺スダケデハ 飽キ足ラナイ……』
本来の物語であれば、まだまだ遠い先の先、
『命ハ 助ケテ上ゲル 今ハマダマダ 使エソウダカラ……』
まるで元の世界で陥った、あの時のわずらわしさの、無意識のうちの意趣返しだとでもいう風に、光る君に
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