第174話 訪れた災厄 5
葵の君と紫苑の上に、厨子棚が倒れてきた少し前、庭へ出た大宮や左大臣家の女房たちは「関白が
確かに火は勢いを増して近づいており、立ち込める焦げた匂いに、幼い日の大火の記憶がよみがえった大宮は、螺鈿の君を抱えたまま、とうとう気を失うと、官吏に抱きかかえられて、人気のない
「この方は、
「そちらは三条の大宮です!
乳母が、「大宮を牛車に……」そう言い終わらぬうちに、小さく舌打ちした官吏は、大宮を地面に置くと、乳母を刺し殺してから、再び抱き上げた大宮を馬の背中に上げて、そのまま自分も飛び乗り、
彼が急いでその場を離れたのは、すぐそこまでやってきている、複数の馬の
彼は大宮と
そして火災の煙の匂いで、腕の中の姫君から有名な“睡蓮の薫り”がしないことに気づいたのは、つい先ほどのやり取りの時であった。
いつもいる
ひょっとしたらと、
「欲をかいたばかりに、面倒なことになった……」
彼はそう言いながらも、せっかくだからと思い、
左大臣家の女房たちが、大荷物を抱えて
「大宮と葵の上はどちらに?!」
「あ、葵の上は、あとからすぐにいらっしゃると……煙で見えませぬが、もう庭の近くを歩いているはず……」
「大宮は先に
「わたしが何人かを連れて、
すぐにやってきた白蓮がそう言うので、
別当はすぐに平安京を取り巻く、すべての門を閉じるようにと、それぞれに馬を走らせてから、先に右大臣のやかたにやった
*
『多分、本編とは関係のない小話/百人一首、陰陽師編』
弐「百人一首? なんですかそれ?」
壱「いま、後宮で流行っているらしい」一セットもらってきた。
参「なんとなくやる気がしない……」囲碁でいいやとか思っている。
弐「やる気……!」
伍「掛け百人一首?! 僕、百人一首なんて全然、知らないんですけど!!」
弐「インチキ(呪)なしな、一週間後にやろう!」
六「で……?」
弐「……」一番負けて、勝ってサボろうと思ったシェアハウスの掃除係を一ヶ月することになったのでした。
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