第164話 別れの時 4
〈 帝と光る君が暮らす
「
帝は、光る君を手元に残したがったが、母を亡くし、喪に服すべき皇子が内裏にとどまっている訳にはゆかぬので、彼は慌ただしく後宮をあとにし、
「どうして女御にしてやれなかったのか、どうして光る君を東宮にできぬのか」帝は
彼女が亡くなったという知らせは、あっという間に内裏中を駆け巡る。決まり通りの葬儀のあと、
墨染の衣をまとった光る君は、まるで信じられないと思いながら涙を流し、空に上がる煙を拝むでもなく、ただぼんやりと牛車の中から煙を見上げる。
元の話とは違い、彼はもう『物心』がついていたので、小さなやかたに戻ると、母の形見の装束一式と櫛のひとそろいの入った箱を前に、静かに悲しみと物思いにふける。
悲嘆にくれた帝も、せめてもと、
さすがに大宮が帝をすぐさま、たしなめられたが、「お気づかい無用でございます。出過ぎたことにございました」
帝の側仕えの女房たちは、
『えっ?! この間まで、メチャメチャ悪口を言ってたのに?!』
皇子と一緒に帝の前から退出しようとしていた葵の君は、帝の側づかえの女房たちが、
運命の女神の
ここは大人(中身)である自分が、なんとか
「あの、皇子……」
「よいのですよ、大丈夫です……」
彼は
実際、第一皇子にとって帝の言葉など『今更』と割り切れるものであった。光る君が生まれて以来、帝にとって自分はそういった存在であると思ってはいた。そして皇子は深く憂慮する。
あの様子では、ますます
自分は来年の春には正式に東宮位に就く予定だが、帝から自分への譲位を早めることはできぬものかと、皇子は
それは母君である
元々、ひとつ年上とも思えぬほどに、大人びた方でいらっしゃるが、日々のさまざまな博士の講義や剣術の稽古を
夜遅く、ご自分の殿舎に帰っても職務に励んでいらっしゃるご様子の
実際、姫君がくるまでは、そんなことは日常茶飯事であった。しかし
「
「祖父にですか?」
「なるべく急いで、それも内密に」
「……承知いたしました。皇子、どうかお気を落としにならないで下さいませ。帝は突然のことに取り乱していらっしゃるだけでございましょうから……」
葵の君は
『なにも好き
「やはりまだ起きていらっしゃったのか」
「
「大変な騒ぎに
「わたしよりも、
よほど心配だと言いかけた葵の君は、ふと思い出す。
「一度、
「臣下に降りたあとの、わたしの人生を、ひどく熱心にお聞きになっていた。はっきりとはおっしゃらなかったが、
「………」
もし、もしも帝が、もう少し
そう思いながら、彼の肩にしばらくもたれて、目を閉じていた。「なにかあれば、すぐに式神を飛ばすように」そう言い置いて、彼が大内裏に帰ったあと、遅いお風呂に入って殿舎に戻る。まだ母君が帰っていらっしゃらない。
「母君はまだお帰りにならないの?」
「それが、帝が悲しみの余り眠れぬと、大宮をお引止めだそうで……」
困惑した様子で返事をした
葵の君は母君に、せめて、ひと口でもと、“飲む点滴”とすら言われる甘酒を勧めて、母君が飲んでから眠ったのを確認すると、自分も寝ることにした。もう夜は終わりに近かった。
「ポンコツ……」
葵の君は
本来であれば、帝の
*
『本編に多分関係ない幕間の小話/
※
葵の君の御殿で、母君が心配そうな顔をしている。
母「なにもあなたの髪で練習をしなくても……なにも本当に切らなくても……ああ!!」
青い顔でカミソリを持っている
葵「だってもし本番で失敗したら大変ですから! バッサリいってもまた伸びます!」
中「バッサリ……」ちょっと眩暈がしてきているのでした。
弐「こっわっ!!」
揃えようとして、じょじょに短くなっている。(結局10㎝くらい短くなった)
伍「やめて――!!」
六「!!!」心臓が止まりそうになっている。
式神で覗き見している三人でした。
葵「ちょっと首が楽になったかなぁ?」
身長くらいになっていたのが、うっとおしくて仕方なかったのでした。
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