第165話 別れの時 5
元の話よりずいぶん遅れた
翌日、公務から帰った葵の君は、またもや母君を呼び出して返さない帝に腹を立て、それでも仕事がたまっているので、持ち帰った書簡を文机の上に広げていた。
しばらくして、紫苑が遠慮がちに声をかけてくる。
「姫君、
「
「なんでも近いうちに管弦の
『ひえっ! それ、『源氏物語』で実際にやらかしたヤツやんか!』
元の源氏物語でも、
「
「え、いいえ、
「そう、ではそれは取り止めて、急ぎ
「………」
困惑した表情でやってきていた使者は、
「さすがに、この時期に
「
「それも至急に、すぐにいらっしゃるとのことでございました」
萩は伝えながら
やがて
幼いながらも照り輝くように美しい方であるが、今日は少しお顔の色が優れない。挨拶もそこそこに、心配そうなご様子で
「昨日はとんだ出来事でございました。
「いいえそれも、わたくしの臣下としての至らなさです。そっとして差し上げた方がよかったのでしょう」
あの時、悪しき前例を作りかねないと言う
(いまは亡き
そんな奥底に流れる恨みを思い出した
「どうかわたくしの言葉を“朱雀帝”のためと思って、お聞き入れ下さい。
「朱雀帝……」
「来年には東宮になられ、皇子が朱雀帝となられた
「……」
「朱雀帝には、この先も母君である
「わかりました。
「お気持ちは
「
「いまのところは
「ほほ、ほほほ……」
乱心ではなく、
「ははぎみ、どうなさったのですか?」
「どうなさったのでしゅか?」
「なんでもありませんよ、もう夜も遅いのに、まだ起きているなんて、なんと悪い内親王方ですこと……」
気を取り直した
*
〈後書き〉
本来なら、光る君の“顔面偏差値&愛されパワー?”で、誰もが袴着の特別扱いを帝と同じ視線で見ていたはずなのですが、ちょっとずれた世界なので、なにかもう誰も損しかしていない(帝やなんにも考えてない左大臣のような人は除外)袴着だったという怖い想像でした。漢方医が行方不明になっていますが、真面目に? 悪いことを考えています。葵の上奇譚の帝と一緒で、本人には一切の悪気はないのですけど。
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