第二章
第161話 別れの時 1
夏を迎えた頃、急な話ではあるが、
と言うのも、元々、
あまりにも急だった上に、
そんなことには気づかない、
(いくら帝を頂点とする律令国家とはいえ、先に後宮に入内させている后妃たちの実家や女御たちの了承を取るのは、後宮設立以来の暗黙の取り決めであった。)
当然のことながら、内裏での
それからも一向に、
いきおい帝は以前にも増して、
そんなある日、真夏の太陽が天高く登る時間、葵の君は涼し気に見える(だけ)の夏用のシースルーな、それでも十枚以上も
今日は涼を求める夏の歌会の日で、
『暑い! ひたすら暑い! なんの罰ゲームなんだろうか? だらだら氷が溶けてゆくのを見て涼しいの?! あれ、かじっちゃだめなの?! スポブラさえあれば、もう少し薄着ができるのに!』
なぜこの暑いのに、一枚一枚が薄手とはいえ、葵の君が誰よりも重ね着をしているのかというと、“パンツもブラもない!”そう言う訳であった。いくら外見が十歳とはいえ、気恥ずかしさが先に立ったのだ。
『スケスケなの! 二、三枚重ねたくらいじゃ、どうにもならないくらいスケスケなの!』
そんな訳で、前世では道着にゼッケンを縫いつけるくらいしかしたことがなかったし、今現在も、『お姫様ofお姫様』そんな立場であったので、裁縫などからっきしであるにも関わらず、葵の君は、ただでさえ短い睡眠時間を削って、深夜にこっそりと紫苑に用意してもらった自分の肌の色に近い、少し厚手の生地を相手に格闘する日々である。(さすがにブラを作ってとは、言いにくかったのであった。)
美しい装いの后妃たちが暑さに負けて、御簾の中でパタパタと倒れてゆく中、それと分からぬように光る君のファンの宮中の女房の嫌がらせで、できるだけ風が通らぬ暑い席に座らされていた葵の君は、それでも持ち前の体力と気力で、なんとかその場を乗り切ると、
「どうしましたか?」
光る君ファンの宮中の女房や女官たちに、地味な嫌がらせを受けてはいるが、まさか昼間っから、ここまでの嫌がらせはないだろうと思って、葵の君が女官に聞いていると、そこに真面目な表情の兄君が目の前に現れた。
「今日は帰りなさい。
「え……?」
帝が引き留めている間に、
ここ数日、つき添っていた
死相の浮かぶ
そうしてようやく
その
一瞬見えた
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