幕間
第157話 幕の間 1
〈
「
藤壺での騒ぎの翌朝、真新しい
平絹で仕立てられた
つやつやした黒の縁取りに施された小さな金細工は、几帳の飾りとすべて統一された唐華文様で、華やかな中に上品な雰囲気が漂う。これは新しい
チラリと見える目元も美しく、昨日、見たはずの鮮やかな光を放つ黒髪は、なぜか昨夜よりも長い印象で、夜の滝のように
念入りに、しかし品よく化粧を
一番下にまとった単衣は白雪色。その上に初夏の緑を思わせる苗色、さらに上に
表地は
ウェディングドレスの長いトレーンのように、後ろに長く広がる『
後ろ髪には
これはここのところ、大宮のご機嫌を損ねてばかりだったので、なんとか大宮のご機嫌うるわしい笑顔を見たい左大臣が、葵の君と大宮への贈り物にと密かに発注していた髪飾りで、昨日の深夜、ようやく左大臣家に届いていた。
そんな訳で、例の大粒の“
「世界で一番のお姫様だわ」
身支度が整った姫君を見て、大宮は満足げにそう呟かれ、父君である左大臣は横で壊れたからくり人形のように、何度も頷きながら姫君にみとれ、久しぶりに拝見した大宮のなによりも誰よりも尊くお美しい笑顔に、うっすらと涙を目に浮かべて見入っていた。
閑話休題。
「本日ただいまより
葵の君はそう言って、
いつもの黒い束帯を着て畳に座している
「慣れぬことばかりで、とまどうこともあろうかと存じますが、太政官や八省すべての公卿が期待しておりますことを、一同になりかわってお伝えします」
彼はそう言ってから、
こうして葵の君の怨霊騒動は、ひとまずの終焉を迎え、二人は夫婦でありながら
*
『多分本編と関係のない小話/いつもの平安シェアハウス編』
参「ないないないない!」早朝。
四「どうかした?」
夜に弱く朝には強いので、もう起きて朝ごはん食べて、在宅で夜の分の仕事までしている。
参「木階(階段)の端に置いていた亀の甲羅、知らない?!
四「
参「ソレ! 持っていくの絶対に忘れないように、わざわざ置いていたのに!!」
四「それなら多分さっき宿直帰りの“伍”が、典薬寮で高価で買い取ってくれるって持って行っ……」“参”が目の前から消えた。
参「お前、今日から一か月、式神なしで寝殿の掃除当番な……」甲羅を取り返している。
伍「いった――」グーで思いっきり頭を殴られて、しゃがみこんでいる。
典薬寮の役人「それ売ってくれないんですか?」
参「売り物じゃないんです。お騒がせしました」ニッコリ。
ヤバくない生薬の材料になる買い取り商品は、典薬寮の外壁の掲示板に「買い取りいたします」の木札がかかっているのでした。
六「“弐”の悪いところだけが移っている……」朝食中。(今日は食べにきた。)
壱「ソレ最悪だろうが」思わず箸を止めたのでした。
弐「ハックシュン!!」今日は左大臣家でバイト中でした。
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