第150話 追走曲 17
〈 葵の君の一行 〉
三人は、ようやく
「閉まっている……」
「それは当然ですよ、いまは誰も住んでないから……」
不気味な煙が
「庭に回って……わっ!!」
光る君は、なにも分からないなりに、常識的にそう言ってみたが、
「開かない!」
「わたくしがご一緒に! 今一度、挑戦いたしましょう!」
少しして
「~~~~」
『逃げよう! やっぱり怨霊が取り憑いているんだ!』
光る君はそう思い、くるりとうしろを向くと、丁度、人影が近づいてくるのが見えた。それは“六”と、数珠を手にした
「
そう言ってから、やってきた人影のうしろに隠れると、
「第二皇子を確保して下さい! この騒ぎの最後の切り札です!」
「わかりました!」
「えっ……?! わっ!」
光る君は、あっという間に別当に、軽々と持ち上げられて、気がつけば彼と“六”と一緒に、煙の立ち込める
別当がやってきたのは、第一皇子の安全確保が最大の目的なので“騒ぎの切り札”と聞いて、とりあえず第二皇子を確保したのであった。
「なんだこれは……」
“六”は絶句する。
藤の花は狂ったように咲き乱れ、
藤の
葵の君は皇子を連れて、穴に駆け寄ると中をのぞき込む。
「姫君、これは一体どういうことですか?」
「あとで説明します。でも、第二皇子の側にいれば、攻撃されることはないので、皇子は絶対に確保していて下さい」
「姫君?!」
「あとで合図します! 合図があったらわたしを引き上げて!」
葵の君は“六”にそう言い、
その頃、庭に沸く猿を、なんとか始末した
「葵の君!!」
彼がそう叫びながら穴を凝視していると、薄らと、こちらに向かって手を伸ばしている姫君の姿が見え、ほっとしたのもつかの間、地割れのような音が響き、穴は姫君を底に残して、じょじょに深くなっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます