第132話 東雲の前 1
〈 翌朝/大内裏 〉
朝日の気配も見えぬ明け方前、大内裏の門も開かぬ頃、
彼は、相変わらずの光景に、なかば
思いがけず現れた
「こんなに早くから、いかがされた?」
「ここは相変わらずですね。少しお話したいことがあるのですが、人払いをお願いできますか?」
そんな
それとは真逆に
別当は、
平安の時代的には、姫君たちからの評判が悪いはずはないと思われるのだが、まったく色めいた話がないのは、どこかに許されぬ仲の恋人を隠していると、密かにうわさされていた。
許されぬ仲の恋人のひとりに、一時は
先日の
悪い方ではないが、良くも悪くも、うわさを真に受けてしまう性格なのだ。
葵の君が以前「黒は超エリートの証!」などと思いながら、平安時代の殿方の衣装の勉強をしていた通り、高位貴族の公卿であるふたりは、黒の
これは姉君が
要するに彼も、理由は違うとはいえ、つい先日までの
ふたりきりになると、ふたりは少し砕けた口調で会話をし出す。
「まあ、あと少し、春の除目の整理が終了すれば、やや落ちつくと思う。朝早くからどうした? そういえば貴方の姉君である先の女御から、どこかよい姫君を弟君に紹介して欲しいと、お手紙を頂いた件ならば、いま少し待ってくれ」
「……それは永遠に放って置いてくれて構わない、別件できた。よい話ではないけれど、あとで耳に入るよりも、先に真実を伝えておいた方がよいかと思ってね…」
言葉を濁しながら向かいに座った別当は、筆を止めてこちらを見つめる
「それを一体どこで……」
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