第101話 春に咲く花 2
「ご、ごめんなさい! あの、その……いたっっ!」
「姫君!?」
葵の君は、急に体中に強い痛みが走り、息もできなくなる。ようやく痛みが治まり、やっとの思いで目を開けると、自分を心配げに、そして、驚いた表情で見つめる
「姫君、
『誰それ? ああ、そういえば、生霊のわたしが、そんな名前で呼ばれて……ええぇ!?』
目に入る自分の手足が、明らかに伸びている。気がつくと葵の君は、いつの間にかスクスクと育ち、彼らが時々見ていた
『さっきのは成長痛!?』
大きめに作ってあるとはいえ、当然、十歳の自分が着ていた
元は現代人の葵の君には、別にどうといったことはなかったが、
「
驚きのあまり、持ってきた
姫君の見た目、年の頃は、十六、七だろうか。身の丈よりも少し長く伸びた髪が、夜の
だが、大宮に瓜ふたつの美しい
大宮が華やかながらも
姫君は差し入れた単衣の上に、器用にもご自分で対丈になってしまった長袴を履いて、小さな鏡をのぞき込んだまま、目を離せないご様子だ。無理もない。
「ややこしいことになりましたね……」
“六”が姫君の顔を、のぞいているのに気づいたが、色々と問題が多すぎて、彼はもうなにも言わなかった。
『普通こういう時は、なにか光に包まれて、服ごと変身するんじゃないのかなぁ? 子供の頃見ていたアニメでは、ちゃんと着ている服まで、大きくなっていたのに! しかも成長痛つきっていうのが、中途半端に現実的で酷い!』
葵の君は葵の君で、そうは思ったものの、さすがにどうしてよいか分からず、自分を凝視している二人をそのままにして布団に潜り込む。
「とりあえず寝ます。起きたら元に戻っているかも知れません」
「姫君!?」
ふたりにそう言って、葵の君は瞼を閉じると、今度は光源氏に出会うこともなく、夢も見ずに深い眠りについた。
『光源氏め、次に夢に出たら、容赦なく腕の一本はもらうからね!』
葵の君がそう思いながら、眠りについた翌朝、耳に入る話し声に目が覚めて、左大臣家と違う光景に一瞬驚いた。
そして「ああそうか、
その日、関白と
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