第46話 輪舞 4
『失礼な男!』
紫苑はそう思ったが、国中で最も優れた
「
「……どうしてそう思ったの? あと、どこでそれを聞いたの?」
「いった……! み、みんな、知ってますよ?」
いきなり掴まれた肩が痛い。
急に飛び出した『例の事件』の話に、無表情な“六”の水色の瞳の中で、瞳孔だけが驚きを示すかのように微かに収縮している。
「みんなって、誰のことかな?」
ちょっとビックリさせようと思っただけなのに……。
紫苑は言うんじゃなかったと思いながら、絶対に内緒ですよと念押しすると、貴族の女主人の“側仕え”といった、
「子供に内緒話をするとこうなる」そんな見本のような紫苑の行動である。
葵の君が知れば、「なんなのそれ? フリーメイソンかなにかなの?!」と、自分の情報が
「わたしが言ったって、絶対内緒ですよ?」
紫苑は“六”の耳元で声をひそめると、事件の被害者であった
「………」
“六”が
可哀そうな被害者より、己の身の保身か?
「内容までは知りませんよ? わたし、入会したてだし、本当は他に漏らしちゃいけないんで……わっ!」
紫苑は“六”が、ようやく肩から手を放してくれたと思ったら、今度はブツブツと
彼女は気がつくと、庭に面した
見下ろした庭までの高さは結構ある上に、だんだん空高く上がっているような……。気がつけば、自分よりも背が高いはずの“六”を見下ろしていた。落ちたら痛いじゃすまない。
『ちょっと待って! この下は池なのに! 凍っているのに! やっぱりこの人は悪人ね!!』
紫苑は彼を、一瞬でも友達と思ったことを、涙目で反省した。
「でも、被害者が可哀そうだと思ったから、僕に教えてくれたんでしょ?」
「ま、まあ、それはそうですけれど……」
「じゃあ、その“秘密の用事”って、調べてもらえるよね?」
頼みごとじゃなくて、「脅迫されている」紫苑はそう思った。
“六”をよく知っている人間であれば、頼む前に、松の木にでも逆さ吊りにして、白状させる性格なので、随分と対応が優しいと思っただろうが、そんなことは紫苑の知ったことではなかった。
「多分、な、何日か待ってもらえれば!」
“人間てるてる坊主”の紫苑は、落ちるのが怖すぎて、目をギュッと瞑ったまま、慌ててそう言った。
すると“六”は再び
ちょっとビックリさせようと思っただけ、なんて言えない雰囲気に、紫苑は“口は災いの元”姫君が教えて下さった言葉を、今頃、思い出していた。
「なにか分かったら“ふーちゃん”に、僕を呼んでと言って、それから……」
「あ、そういえば、『姫君』の髪の様子を見に行かなきゃ! 早く行かなきゃ!!」
床の上に降ろされた紫苑は、安堵と怒りのあまり、
さすがの“六”も姫君の部屋までは、追いかけてこないと思ったからだ。
*
『本編とはなんの関係もない小話/突然変異蜜柑2』
典薬寮の研究栽培用の畑に、突然変異蜜柑の種を植えている“四”
四「どれどれ……もう少し、間を開けて植えた方がいいかなぁ……」呪をかけているせいか、順調に大きくなっている。
典薬寮の役人「あの、ここはウチの研究栽培用の畑と、何回言えば…」陰陽寮に苦情を言ってもスルーされている。
四「虫よけの御札を特別に無料でお分けしてもよろしいですよ?」純粋な笑顔。
典薬寮の役人「……そういうことでしたら……」冬なのに、なぜか虫が多くて困っていた。
弐「え? 今日から、典薬寮に虫を撒くのは中止?」夜中にコッソリ虫を撒いていた。(蜜柑は虫よけ済み。)
四「もう大丈夫です」
伍「腹黒い……」
壱「ああいうのは、見習わないように……」
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