第28話 回りゆく歯車 6
やがて夜も明けようかという頃、大宮が女房たちに体を支えられながら、なんとか
さすがに疲れたのか、まだ姫君はお休みのご様子だった。そんな大宮に
「恐れながら姫君を、
「え……?」
「恐らくですが、大宮がご
彼のうしろに控えている『
「今回のような恐るべき出来事にも凛として対峙できる姫君に、帝の側にて怨霊の正体を突き止める手伝いをして頂けると考えます。常に帝に接することが公務である
「でも、帝の身辺にも、なにかあるとすれば、そのような危険なところに、葵の君を行かせる訳には参りません……」
大宮の言い分は至極もっともであり、あれほどの気丈さを持ちながらも、まだ九歳の幼い姫君に、心苦しい話であったが、
「今回の一件も終わった訳ではございません。
「………」
「
「まさか、姫君が再びこのような目に!」
「
そう言い残して、
もちろん、その数刻ののち、朝の挨拶に東の対にやってきて、大宮から怨霊騒動や、身の安全のために姫君を
二人には帰るつもりが怨霊の気配がしたので、東の対に
帝の身に関わる件であれば、本当の理由を知る者が少ない方がよいとの指示である。
(要は、二人は
「確かに葵の君が
左大臣が、掌中の珠といえる、姫君の身の安全に関わることとはいえ、迷うのは当然であった。
しかし
人目につくことも多い。屋敷の奥深くで大切に育ててきた姫君が、そのような場に耐えられるか、そこも深く心配する。
だが一番は姫君の身の安全である。内裏であれば一応はいまのところ、臣下の中で機能している最高位は自分であり、影響力を発揮させようと思えば、できることも多い。
左大臣は杓をもてあそび、悩んだ末に口を開いた。
「怨霊騒ぎが落ちつきましたら、葵の君を、内裏から下がらせていただけるよう、帝にはお願いしましょう」
まだ思い悩む大宮に安心して頂けるように、そう声をかけた。
「そのようなことができましょうか?」
「姫君の将来にも差しさわりがございます。怨霊の件は伏せておく方がよいでしょう。
「お願いいたします」
初めて見るような厳しい顔つきで、大宮にそう誓った左大臣は、朝の支度を整えると、なにやら手紙をしたため、早馬の手配をさせてから内裏に出仕した。
*
『本編とはなんの関係もない小話』
左大臣家から陰陽寮に帰ってきた、真白の陰陽師たち。
バタバタと仕事をした後、帰り際に“六”に、隠しているものを出せと言われた、なにか包みを手にしている“伍”
伍「誰も手をつけていなかったので、持って帰ってもいいかなと! 勿体ないですし!」部屋の隅にあった、茶わん蒸しの器みたいなものに入っている手つかずの蜂蜜プリン4個。(菓子は超貴重品な上に、見たこともない菓子でついもらってきた。)
六「卑しい……」一個は、元々は自分の分とか思って、首根っこを掴んでいる。
弐「6人いて、4個ある。あとは分かるな?」後輩をおどしている。
壱「わたしはいいから、くじ引きで決めなさい……」ため息。
伍「おいしかったな――」幾らでも食べたいと思いながら、陰陽寮の隅で器を洗っているのでした。
六「……」ハズレの上、器を返しに行っているのでした。
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