第27話 回りゆく歯車 5
これでもし『
寝殿の方では相変わらず
それにしてもひとりで探索するには、東の対だけでも広すぎる。
広大な左大臣のやかたをぐるりと見渡して、ため息をもうひとつ。
やがて駆けつけた真白の陰陽師の全員で手分けして、東の対の探索を始めた。
庭を調べていた“弐”の式神が、不審な女房のひとりを発見したが、駆けつけた時には、怪しき女房は、
報告を聞いた
正体は掴めぬが、大宮から聞いた帝に漂う『陰』と、姫君を
先ほどの『
恐らく今回出会った怨霊は、帝の側にも忍び込んでいる可能性が高い。しかし、宮中に怨霊が住まえば『
よって、怨霊の本体はどこか別にあり、今一度、姫君に危険が及ぶのは簡単に予測できた。
「どうしたものか……」
帝に怨霊が取り憑いていた場合、世の中が大混乱になるのは必至。
かと言って、この度の一件だけでは、内裏の奥深くまで『怨霊の影』が入り込んでいる決め手となる証拠は、限りなく薄く、密かに怨霊の正体を探り、帝の守りをなによりも優先させるのが当然とはいえ、そうなれば姫君は、今回と同様に、ほぼ無防備になる。
それだけは避けたい。彼は厄介な目の前の状況に眉をひそめ、帝と葵の君が、同じ怨霊に祟られる共通のつながりを考えていた。
「こちらへどうぞ」
どうやら起きてきた女房たちに、姫君が指示を出してくれたらしく、
やがて東の対を見回っていた、
薄暗くなっていた部屋の中には、灯りが整えられ、自分や
「とんだ快気祝いの
“壱”がそう言いながら、一番の後輩である“伍”に、文机と料紙、硯箱を借りてくるように命じる。
前任の“伍”が、去年退職したので、実は“六”よりも“伍”が後輩という、いささかややこしいラインナップであった。
「………」
姫君を呪う立場の貴族も思い当たらない。
現在の東宮候補と見られる二人の皇子のどちらか(前東宮の帝の弟君が亡くなり、現在、東宮の座は空席である)が、東宮に立ったあとに姫君が入内し、どこかしらの貴族の姫君と中宮の座を争う軋轢などがあれば、それも考えられるが、それはあまりにも遠すぎる未来の話である。
それに、そうだったとしても、それでは現在の帝とは、つながらない。
いまのところ、東宮に立つのは常識的に考えて、第一皇子がほぼ確定との内裏の雰囲気であるし、突拍子もない話だが、もし、帝が姫君を第二皇子の妃に! などと
確かに
それに思い込みに近い呪詛と違い、怨霊を操作するのは、己の命を削るほどの覚悟が必要であった。
そこまでの動機があるかと言えば、動機が弱いし、行動がちぐはぐになる。
この度の
お祝い品の披露の間で一番目立っていた。なんなら、帝よりも目立つ勢いであった。
なにせ、第一皇子に葵の君が入内すれば、自分の実家である右大臣家に加えて、摂関家の
そして、性格にはかなり難があるが、
帝を守り、姫君も守り抜く。このふたつの両立に、彼と
「姫君に何事もなくてよかったですね」
「………」
そう言う“六”に同意しつつ、他人を気遣うなんて珍しいなと思った
この男は
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