第24話 回りゆく歯車 2
葵の君の前から姿を消した“六”は、捕まえた『
目の前には
一瞬、
「なにかご用ですか? もう休んでよいと大宮が、おっしゃっていましたよ?」
“六”の気配に気づき、そう言いながら恥ずかし気に隠した
壁で周りから見えぬ
迷信や占いが絡みあい、呪詛や本物の怨霊まで飛び交うこの時代には、自称『霊感体質』は沢山いるが、彼女に関して言えば『鈍感力』といってよいほどに、なにも感じない体質のようだ。
なぜならば、これほど瘴気が渦巻く場所は、気づかないまでも、常人でさえ気分が悪くなりそうな空気であったから。
彼女が持ち込んだらしき、ロウソクの灯り以外は、薄暗い夜が支配する中で、彼女は“六”のことを同じ使用人の誰かと、勘違いしているようだった。
「この塗籠に変わったことはない?」
“六”は、彼女を驚かさないように、なるべく静かに声をかける。そしてそのあとすぐに、小声で九字を切り出した。
『
「え? 今日は、ここにある宝物は、ほとんど北の対や寝殿に持って行って……あれ? あの石の枕……」
紫苑が部屋の隅に見つけたのは、以前、姫君が頭にタンコブを作って、文字通り自分が『お蔵入り』させるべく、対屋の外れにある蔵まで持って行ったはずの『石の枕』だった。
「あれ? いつの間に……」
「やめなさい!!」
紫苑が手を伸ばして、触れようとしたその時、『石の枕』からは、鈍い緑色の光と、不気味な煙が立ち込め、触手のように実体化した『
いきなり
「こちらへ!!」
“六”は立ちすくんでいる
『……ヨコセ……姫ヲヨコセ…………』
触手は呪詛の言葉を吐きながら、“六”の創り出した光の壁を突破しようと、何度も何度も体当たりを繰り返す。
近づく怨嗟の声が、どんどん大きくなるのと同じくして、光の壁は小さく割れ始め、“六”の顔にわずかに焦りが浮かんだ。
自分だけなら、まだ攻撃のしようもあるが、そのために腕の中の
「下がれ!!」
彼の手元には、
『助かった!』
だが、彼のそんな思いを裏切るように、
「!!!」
“六”は唖然とする。
『軍事貴族』と言う言葉が、蔑称にもなるくらい、軍事・警察部門に携わるのは武士の仕事と、儀式や狩りの主役である弓などを除き、その分野に秀でることは、貴族社会では褒められたことではなかったが、彼が専門職である武士以上の、卓越した技量を持ち合わせているのを知っていたから。
そんな彼が剣を抜けないなど、ありえなかった。が、“六”は、それを見て、
どうやら
『薬師如来の具現』
*
『本編とたぶん関係ない小話/典薬寮のアンテナショップ編』
伍「ここがうわさの……」
弐「閉店ギリギリにくると、安いしオマケをくれる……」品物を物色中。
伍「あっ! なにをしているんですか?!」
弐「えっ? 試食、もぐもぐ……」試食と間違えて、はかり売りの蘇を、口にポコポコ入れている。
伍「……先輩は何歳ですか?」“弐”のお財布だけで、支払えなかったので、“伍”まで立て替えさせられた。
弐「19歳、もぐもぐ……」
伍「分別盛りじゃないですか!!」13歳。
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