第1691話 【エピローグオブあっくん監察官への道・その5】臨時監察官会議!! ~ストイックな監察官が生まれる時~

 南雲さんに「3つくらい実績作っておくんなまし」と言われたあっくん。

 青山監察官室で若手指導を的確にこなし、和泉監察官室では文官としての才覚を出し惜しみなく発揮した。

 「じゃあ後1つはどうしようか」と考えていたところ南雲上級監察官室に異世界ルベルバックより「そろそろリコタンクの最新式を開発してもよろしいでしょうか」という、ダメだって言ってんのに頑なに兵器ラブの姿勢を崩さない軍事国家から通信が入る。


 「ちっ。ルベルバックにはよぉ。俺ぁ足向けて寝られねぇんだよなぁ」と言って、近所のコンビニにおつかいへ行く感覚で「リコタンクはもう造らねぇって話だったろぃ。俺の『結晶外殻シルヴィスミガリア』でもベースにして機動兵器造りやがれぃ」と現地でキャンポム代理総督と話をつけて、諸々を6時間で済ませたあっくん。


 「3つくらい」とか適当に言った自分を恥じた南雲さん。

 ルベルバックと外交交渉してくれているだけで3を100に換算してもお釣りが来るし、南雲さんは命の危機を救ってもらっているし。


 そんな訳で、臨時監察官会議が開かれる運びと相成った。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 議長の南雲さんが「思ったより皆さんちゃんと出席してくれましたね」と驚く。

 久坂さんがお茶を啜りながら言う。


「うちのジョーちゃんに監察官やらせようっちゅぅんじゃったら、そりゃあワシは来るって話なんじゃよのぉ!! 自慢の息子じゃぞ!! こんなもん議論の余地すらなかろうが!! ほいじゃあ決取るでー。ジョーちゃんに監察官やって欲しい人は挙手してくれー」



 結論に向かうのが早すぎる。

 まだ開会の挨拶だって済んでいないのに。



「良いんじゃねぇかぁぁぁ? 阿久津は芽衣ちゃまの昇進査定の時にリコスパイダー一緒に倒してくれてるからよぉぉ!! 良いヤツじゃねぇの! オレは賛成だぜぇぇぇ!!」


 ミスターゴリラ、失礼、木原監察官もちゃんと出席。

 監察官会議ではオヤツが出るので、木原さんはだいたい10人前くらい食べて帰る。

 ちなみに今日のオヤツはクリームあんみつ。


 あっくんはチーム莉子の乙女たちとも仲良しなので、当然だが芽衣ちゃまとも関係は良好。

 ならばゴリラおじ様との関係値は勝手にマックスになっているのがこの世界のルール。


「まだ始めますって言ってないのに……。まあ、はい。阿久津くんのAランク探索員復帰については全会一致で承認って事でよろしいですね。じゃあ次に監察官への就任ですが」

「話す事とかない言うちょるじゃろうが! うちのジョーちゃんに何の文句があるんじゃ!!」


 久坂さんの隣に座っている楠木監察官が「まあまあ、久坂さん」と窘めつつ「私も異論ありません」と賛同する。

 ミスターゴリラ監察官は既にゴーサインを出し終えてあんみつタイム。


「げふごふ。小生はあっくんさんが倒れないかげふ。心配でごふっ」

「あぁ? あんたが倒れてねぇんだから余計な心配するんじゃねぇ」


 そしてとても大事なことだが、もう既にあっくんが「やりゃ良いんだろぃ」と半ばあきらめて、ちょっと捨て鉢になって監察官就任の覚悟完了させているところが大きい。

 もはや信任投票の体を成してすらいない。

 彼よりも有用な人材がどこにいるというのか。


「あのー。よろしいでしょうか」


 だが、ここで意外な人物が異を唱えた。

 最年少の監察官記録を更新した青山仁香すわぁんである。

 25歳の乙女が言った。


「もちろん。どうぞ、青山くん」

「あ。はい。あっくんさんの登用にはまったく異論なしなんですけど。さっきからモニターの向こうで……。その……。すみません……」


 モニターとはサーベイランスの映像通信である。

 京華さんは今日も育児に忙しいので「川端でも名代にしておいてくれ。ダブルおっぱいで手が離せん」と言って、元日本本部所属監察官、現フランス本部所属監察官兼ネオ国協筆頭理事の川端一真おっぱい男爵がデルタウェアから会議に参加している。


 仁香さんが異を唱えたのはあっくんの人事についてではなく、モニターの方。


『ダメですよ、ダメぇ!! あっくんさん自分より若いじゃないですか!! これ以上ね、若手の登用とかいらないんですよぉ!! 自分の帰る席がなくなるじゃないですか!! あっくんさん、年功序列って言うのは大事なんですよ!?』


 川端さんが眉間にしわを寄せて「申し訳ない。たまたま居合わせてしまいまして」と首を横に振る。


『それにしても仁香すわぁん!! 今日はスカートなんですね! スーツ!! もうちょっとカメラの前に来てくれません!? やは!! あなたの水戸信介ですよ!!』

『よさないか、水戸くん。君が一言喋る度に。君が一つ呼吸をする度に。君の評価だけが下がっていくと何故分からない?』


 仁香すわぁんが「後できつく言って聞かせておきますので。本当にすみません。続けてください。南雲さん」と頭を下げた。


『監察官は30過ぎないとなれないんですよ!! あっくんさん!!』

『つぁぁ!! 『乳液ミルク』!!』



『ぎゃあああああああああああああああああああ!! め、目がぁぁぁぁぁ!!』

『南雲さん。私も阿久津くんの監察官就任、心強く思います。もう日本国籍を持たぬ私ですが、ネオ国協の立場から信任させて頂きたい。……では、水戸くんをそこの窓から落とすので、失礼します』


 それから水戸くんはネオ国協本部の8階から地上へ落下していった。



 加賀美監察官が手を挙げる。

 彼も20代の監察官。きっと建設的な事を言ってくれるに違いない。


「監察官室はどうしましょうか?」

「さすが加賀美くん、着眼点がいいね。それについては川端監察官室だった部屋が空いているから、そこを使ってもらおうかと」


「廊下の端じゃないですか! うちと場所を代わりましょうか!?」

「あ! それでしたら私が移動します! 一番年下ですし!!」


 あっくんが自分の言葉で加賀美さんと仁香さんの厚意を丁重に断る。


「あんたらのところはどっちも大所帯だろうがよぉ。俺ぁ今んとこ1人だぜぇ? 気遣いはいらねぇんだよなぁ。こっちが気兼ねしちまうって話だぜぇ」


 だいたい意見も出揃ったところで、南雲さんが纏めに入る。


「では、全会一致で阿久津浄汰Aランク探索員を監察官に昇進させる旨、可決ということでよろしいですね?」


 「異議なし」と監察官たちの声が揃った。


「副官は小鳩ちゃん……失礼しました。塚地小鳩Aランクが担当されるんですよね?」

「それなんだがよぉ。南雲さん。あんたんとこの嫁さん、復帰するのはまだ当分先になるんだろぉ? そうなるとよぉ。五楼上級監察官室を遊ばせちまう事になるんだよなぁ。山根春香さんを副官って事にしてもいいかぁ?」


「私は構わないというか、確かにそっちの方がスマートな人事で良いというか。阿久津くんも春香くんとはこれまで同じ上級監察官室で働いていた訳だからやりやすいだろうけど……。いいのかい?」

「あぁ?」


「いや。小鳩くんが副官やる気満々だったから」

「ちっ。嫁を副官なんかにしたらよぉ。仕事に集中できねぇだろうがよぉ。仕事は遊びじゃねぇんだぜぇ? 乳繰り合うなら家でやるってんだよなぁ。俺ぁ公私混同ってのが嫌いなんだよなぁ」



「ごふぁぁぁっ!!」

「おおっ!? 和泉の!! しっかりせぇ!! どがいしたんじゃ!!」


 何故か分からないが、和泉さんが血を吐いた。

 何故だろうか。



 よく見ると仁香すわぁんも程よいサイズの胸を押さえて「うぐぅ」と唸っている。

 何故だろうか。


「……阿久津くん? その話、小鳩くんにはしてるんだよね?」

「あぁ? この後でする予定だぜぇ」


 南雲さんがこめかみを押さえて俯いた。

 そして小声で呟いた。


「小鳩くん、そこにいるんだけど。涙目でプルプルしながら……」

「あ゛ぁ゛!?」


「だって! もう小鳩くんが副官やる流れだったじゃない!? 気を利かせたのよ! 私ぃ!!」

「……クソが!!」


 次回。

 阿久津浄汰監察官、爆誕。


 嫁の瞳から流れるは歓喜の涙か。それとも。

 南雲クソさんは早いところごめんなさいした方が良いように思えてならない。

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